大納言先生の魔法の授業
鷺ノ宮真人
第1話 俺の気持ちに気づいた大納言先生
明るい陽射しが差し込む教室。国語の時間。
退屈でちょっと意地悪な大納言先生の授業。
先生にあてられたさくらさんは,いつものように完璧に先生の質問に答えている。
さっと教室に入り込んだ風が,黒板の近くのカーテンをふわっとゆらし,
さくらさんの背中まで伸びた黒髪も,少しだけゆれる。
さくらさん,今日もかわいいな。
教室の窓側の席で立っているさくらさんを,俺はすこし後ろから見つめる。
もし,二人きりになれたら,きっといい感じになると思う。
いやっ,いやいやいや,うん。たぶん大丈夫。
あっ,でももしそうなったとして,なに話したらいいんだろう。
えーっと,どうしよう。どうしよう。
うーん。やばいやばい。何も思い浮かばない。
って,もしもの話でなんでそんなに悩んでんだ,俺は。
チャイムが鳴る。授業が終わる。
横に座っていた溝口が,何ボーっとしてんだよって,指で俺の体を突いてくる。
うっせーよ。お前には関係ないだろうが。
いや,別にさくらさんを見ようと思って見てるわけじゃねえよ。
でも,いつの間にか目がそっちにいっていて,
気付いた時には、いつもガン見してる。
で,ハッと我に返って,ダメだ,ダメだ,って,
何がダメかよくわからないけど,
他の奴らに悟られないように,何食わぬ顔して目線をそらす。
たぶん,俺の目線にさくらさんも気づいてんじゃないかな。
べつにそれはいいんだよ。
ていうか,むしろ,さくらさんも俺のこと意識してるのかなって感じが,
ちょっとうれしかったりする。
それよりも問題は大納言先生。
あいつ絶対気付いてるよ,俺が授業中に何度もさくらさんを見つめてること。
今日なんて大納言先生,なぜか知らないけど,
丸い黒目を見開いて,俺の顔をじっとみながら,
うんうんってうなずいて,教室から出てったもん。
絶対気付かれてるよ。
大丈夫かな。生徒指導とかないよね。
大納言先生の魔法の授業 鷺ノ宮真人 @saginomiya-mahito
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