一年目 十一月上旬 警視庁公安部外事二課・阿久津光太
『こちら「シカゴ」。マルタイは、説明を受けた通りの経路で、1つ前の交差点をそちらの直進中。3分以内に、そちらに到着見込み』
同じチームの同僚から無線連絡。
気が進まないが、やるしか無い。
阿久津が自分にそう言い聞かせるのは何度目だろうか?
万が一の場合に備えて、阿久津には詳細な情報は知らされていない。
ただ……
「こちら「アトランタ」。マルタイを確認」
住宅地だが……夜の9時過ぎ。人通りは、ほぼ居ない。
「待てッ‼」
「逃げてッ‼」
その時、男2名の声。
「こちら『アトランタ』。すぐに来てくれ。何者かがマルタイを誘拐しようとしているッ‼」
「阿呆か、誘拐犯は
「黙れ、誘拐犯ッ‼」
もう1人は、女子中学生の手を引いて逃走。
阿久津は自分に危害を加えようとする誘拐犯にスタンガンを押し当てる。
「あばばばば……」
誘拐犯の片方は悲鳴をあげながら倒れ伏す。
しかし、もう片方は……。
ずしりと重いローキックを食らった足は……言う事を聞いてくれない。
走る速度は……いつもより遅い……。
その時、前方から、まぶしい光。
ネット上でネタ的に「誘拐犯御用達」扱いされている車種のバンから阿久津の同僚3名が降り、誘拐犯を特殊警棒で殴り付ける。
女子中学生の悲鳴が響き渡り……慌てて阿久津の同僚の1人が口を塞ごうとするが……。
何だ? どうなっている?
阿久津の目には同僚と女子中学生が揉み合っているように見えた……。
良く見ると……女子中学生が同僚の手に噛み付いていた。
だが、阿久津の同僚は防刃素材製の手袋を……その時、もう1度、悲鳴。
そして……。
「お……おい……どうする」
「す……すぐに……保護だ」
「で……でも……これ……」
「う……上の指示を仰がないと……マズいぞ……」
「で……でも……これじゃ……」
「失敗だ……今回は失敗。今日は
「お……おい……」
「貸せ」
「貸せって……何を……」
「お前が手にしてる『道具』だ」
「えっ?」
「早く寄越せ」
阿久津は、同僚の手から特殊警棒を奪い取ると……
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