一年目 十月中旬 某県警機動隊員・山崎宗司

 何日目か数えるのをやめた。

 あと、どれ位、この「訓練」が続くのかを考えるのをやめた。

 楽だ。

 楽になった。

 悟りでも開いた気分……ん?

「おい、何やってる?」

 「少数派」の1人である青木が自分の左腕から血を……いや……自殺じゃない。自分で自分の腕を傷付けてて、傷は深そうだが、太い血管をわざと外してる。

 それに、刃物なんて、どうやって持ち込んだ?

「記録だ……」

 青木の腕には……いくつもの「正」の字。

「今日が、何日目かを忘れそうなんでな」

「何の意味が有るんだよ?」

「キザな言い方だが……人間であり続ける為に決ってるだろ」

「はぁ?」

「判んねえのか?」

 その後、青木が何かをまくし立てたが……俺には意味が判らなかった。

「うるせえ、うるせえ、うるせえ、黙れ」

 俺はを止める為に、青木の腹に蹴りを……い……いてえッ⁉

 青木は……俺の足にを突き立てる。

 あがががが……畜生、頭いいからって俺達を見下しやがって。

 殺す。

 殺す。殺す。

 正当防衛だ。正当防衛。

 警官ポリのクセに警官ポリを殺そうなんざ、ふざけた野郎だ。

 正当防衛だ。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。

 あれ?

 ん? 先に手を出したの、どっちだったっけ?

 関係ねえや、正当防衛だ。警察官がの俺が正当防衛と言えば正当防衛だ。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。正当防衛。

 人権派のクソ弁護士さ〜ん、御仕事ですよ〜。

 あれ?

 周囲でも喧嘩が始まってら。

 まぁ、いいや……。

 青木のクソをブッ殺したら……腹が減ったな……。

 ブッ殺した?

 まだ、生きてるじゃねえか。

 でも、頭打って気ぃ失なってる。

 死んだも同じか。

 ああ……何か食うモノ……。

 有る。

 丁度いい。

 ここに、食材と……包丁が有る……。

 食材がこっそり作ってた、石器の包丁。

 ……。

 …………。

 ……………………。

 …………………………………………。

 ユッケ、おいしい。

 醤油と薬味が有ったら、もっとよかったけど。

 あと、ビールも飲みたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る