一年目 七月下旬 調査委員会
「つまり、この調査委員会のメンバーは公安警察の監視対象になっていた……。しかも、公安の担当者には我々を何の為に監視しているか教えていなかった、と」
調査委員会の座長である都内のある医大の名誉教授である栗原壮介は、説明の内容をそう要約した。
「は……はい……」
担当の官僚はすまなそうに答えた。
「なるほど。勤め先の電話も、個人の携帯電話も、職場や個人のメールも、メッセージ・アプリやSNSも全部、公安に監視されていたと」
「ええ……」
「公安が、まだ、目を付けていないメッセージ・アプリかSNSは無いんですかね? 我々に求められているのは自由な発想に基く議論じゃなかったですか? それなのに、我々は自由を制限されているも同然だ」
「善処します」
「はぁ、善処ね」
「ところで、笠原先生は……何で、公安に捕まったんですか?」
これまでで、一番の成果を上げている生物学者の矢野がそう訊いた。
「どうやら、不審なメールを出したと云う事で……」
「どう不審なのですか?」
「笠原先生は……少し前に新書を出されていたのですが、その新書を書かれた際に意見を求めたり、資料を提供していた人達に……その……」
「どう云う事? 何の新書なんです?」
「
「はあっ?」
「どうやら、笠原先生は、
「ちょっと待って下さい。まだ、データが少なくて誤差が有る事は笠原先生も御存知の筈ですよね? それに……Unknownと太平洋戦争に何の関係が……?」
「
「へっ?」
「もちろん、笠原先生も、まだ仮説の段階だと言われていましたが……
「えっ?」
「どう云う事だ?」
「どうなってる? 単なる擬似相関では無いのか?」
「すいません……それと……Unknown被疑者か否かを確かめていただきたいDNAサンプルが有るのですが……その……数の問題が有りまして……」
「あの……何の事ですか?」
「もし、私どもの予想が当っていれば……最悪は……警察や自衛隊が我々の敵に回ります」
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