第10話

 仕事を終え、帰宅する。

 玄関で「ただいま」と、暗い部屋の向こうへ声をかける。

 一度くらい「おかえり」と返ってきても良さそうなのに。毎日、毎日、ちゃんとただいまと言っているのだから。

 おかえりと返してくれるのは、この場合、やっぱりチカの幽霊ということになるのだろうか。


 幽霊の存在は信じていない。

 

 死んだらそこでおしまいで、消えてなくなるものだと思っている。

 でも、チカにもう一度会えるとしたら、この世に残る人の魂とか、幽霊の存在を信じたくなる。

 きっと見た瞬間に、安堵してしまうだろう。

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