もう一人の私
@1128mikan
もう一人の私
ゴトン
私は手に持っていたスーパーの袋を床に落とした。そこには、あまりにも信じがたい光景が目の前に広がっていた。なんともう一人の私が立っていてこちらを見てニヤリと笑っていたのだ。
~三日前
私は友達の桜に最近起きている私の身の回りの不思議な事を話していた。
「っでね!仕事場の先輩が横浜で私を見かけたって言ってるの!でも私その日は横浜なんて絶対行ってないんだよね~」
「何それめっちゃホラーじゃん」
「でしょ!?」
「でもそれただのそっくりさんとかじゃないの?」
「それが…先輩が一人で歩いてた私に声をかけてくれたみたいで…」
「それで?」
「……美紀ちゃん!って声掛けたら振り向いてペコリって一礼して行っちゃったんだって」
「マジか、でもそれ先輩が美紀と勘違いしてたから取り敢えずお辞儀だけしたって感じじゃない?考えすぎだよ」
「でも、それだけじゃないの」
私は最近起きている不思議な事を洗いざらい桜に話した。
「こんなに身に覚えのない目撃情報があるんだよ?もしかしたら私のドッペルゲンガーなんじゃ……」
桜は苦笑いをしながら否定した。
その夜私はもし自分の前に現れたら、と考えてしまい眠れなかった。
~二日前
私は怖くなってしまい家から出られずにいた。会社も休み一日中家の中にこもっていた。
~一日前
今日も家から出ずに家にいるつもりだった。するとスマホの着信音がいきなり鳴り、ビクッとして見ると電話を掛けてきたのは桜だった。慌てて電話に出ると、桜が今どこ?っと聞いて来たので家に引きこもってることを話すと、桜はしばらくなにも言わなかった。私は嫌な予感がして、どうしたの?と聞くとゆっくりと話し始めた。
「今…美紀が私と同じバス停に並んでて、結構距離はあるけどアレは絶対に美紀だよ!」
その言葉を聞いておもわず電話を切ってしまった。そして私はスマホを投げ捨てて布団にくるまりながら小さく震えていた。
~朝
人間は恐怖心があってもお腹は空くのだなと思いながら、朝食を作ろうと冷蔵庫を開けると、そこには空っぽになった冷蔵庫しか無かった。
「どうしよう。いくらなんでも食べないと死んじゃうし……そうだ!桜に頼もう!」
私は投げ捨てたスマホを拾い電話を掛けようとしたが、スマホは投げた衝撃で完全に壊れていた。
「ウソ……自分で買いに行くしかないじゃん」
私は怯えながら近くのスーパーに行った。
スーパーで三日分の食料を買ってレジに向かったがとても混んでいて、家に帰る頃には結局お昼になってしまっていた。
そして玄関を開けて中に入り今に至る。
ニヤリと笑っている私を見て慌てて玄関を出ようとするが、私は恐怖で動けなかった。
「あなた…どうやって入ったの!?」
恐る恐る聞くと、もう一人の私は手にナイフを握りしめていて突然襲いかかってきた。刺さりそうになるナイフを避けてリビングの方に逃げると、もう一人の私が追いかけてきて揉み合いになる。揉み合った結果ナイフはもう一人の私に刺さり、そのまま息絶えていった。私は床に座りこみ息を整えた。するといつの間にかテレビが着いていてテレビからはニュースが流れていた。
「今回明らかになったのは、東京都港区○○丁でクローン計画があったことが明らかになり、数十年間にわたり生まれてきた赤ちゃんから同じクローンの赤ちゃんを作るという行為をしていた事が明らかになりました。また、この計画は国により伏せられていて……」
(クローン?そうか……アレはクローン人間なんだ)
「また、クローン人間として生まれて来た子供達はどの子も必ずおへその横に三つのホクロが縦にならんでいるそうです。もし心当たりが……」
(ホクロ?)
私はもう一人の私のお腹にホクロがあるかを確認して、自分のお腹も見る。そしてもう一人の私が何者なのかを知る。
-そうか…あなたが私……私は-
"偽物"
終
もう一人の私 @1128mikan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます