第9話事件後
貞宗の妹を探し出した鴉と涼太は、彼女を兄に渡したあとに屋敷で手当てをしていた。鴉の火傷が、思ったよりもひどかったためである。白い足を着物からさらけだし、痛みで鴉は涙目になっていた。戦っているときは平気だったが、徐々に痛くなってきたらしい。
「あんな鬼相手に怪我を負うなんて、恥ずかしいよ」
鴉は不満げだったが、涼太には何が不満なのか分からない。鬼は人間よりもはるかに力が強い存在で、一人で倒せたことが奇跡的だというのに。
「隊長は、本当に強いんですね。憧れます」
涼太は鴉の足に軟膏を塗り、包帯を巻く。されるがままになりながらも、鴉は少しむっとしていた。
「君、見る目がないね」
言葉の意味がよく分からずに、涼太はきょとんとする。
すると鴉は、彼の頬を片手で包み込んだ。
「私になんて憧れるものじゃないよ。私に憧れた人間は、なぜだかみんな死んでしまうんだよ」
鴉の目や声は、真剣なものだった。
本当に、かつての部下が死んでいったのが自分に憧れていたせいだと言いたげのふうだった。
「決まりを作ろう」
鴉は、呟く。
そして、もういつもの笑顔を見せていた。
「君は絶対に私に憧れてはならないよ」
これは決まりで約束だからね、と鴉は言った。
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