第31話 男子寮への道
協会の外に出てふと気付く。
俺、自分のお家の場所がわからない。
支部長経由のどこでもドア的な扉で移動していたからね。
「シンさん、男子寮ってあの二つ並んだデカい建物で合ってます?」
協会から1番近いし、おそらく当たりだろう。
間違えていたら外で飲まなくて正解という事になる。
酔っ払ったおっさんが迷子になっていた。
「ん?あぁ、そういえば親父が扉で送り迎えしたんだったな。そうだ、あれが男子寮と女子寮だ。丁度いい、扉の繋ぎ方を教えてやろう。端末の扉アイコンから、登録を押すといい」
良かった、正解だ。
そしてついに俺も、どこでも扉デビューだ。
便利そうで羨ましかったんだよね。
登録をポチっとな。
「押したな?男子寮に向かうとしよう。着くまで少し説明しておく。登録できる場所は3つまで、システムが許可してる場所じゃないと登録できない。部屋の中なんかは無理だな。登録した場所から1㎞以内なら、どこからでも移動できる。一度解除した登録先をまた登録したい時は、また同じ場所で登録しなければならない。使用制限は1日3回までだ。使う時はアイコンから選んででも、扉を出してイメージするでもどっちでもいい。ちなみにイメージして使うなら、登録した場所までの道筋もイメージしなければならないからな。端末で場所を選んで扉を出した方が楽だぞ。覚えれなければヘルプで確認しろ。何か質問は?」
今日だけで覚える事が多すぎる。
神界初心者だから当たり前なんだけどさ。
軽く酔ってるし、歩きながらだからちゃんと覚えられたか心配。
しばらくはヘルプとにらめっこだな。
「多分、大丈夫かと…あ。扉で神界を移動する時に、鍵使ったり使わなかったりするのは何でです?」
メイさんは俺を協会まで運ぶ時に使っていたし、支部長も男子寮に行く時は使っていた。
でも、朝に協会に行く時は鍵を使わなかったはず。
シン兄さんも昼に協会行く時に使ってなかったし。
「ああ、鍵か。扉アイコンから買えるぞ。使えば距離関係無しに、鍵を登録した場所まで移動できる。ただ、少し高い。鍵を買うのに10万円、移動距離1㎞あたり1000円かかる。金持ちか仕事で使うやつくらいしか、あまり使わんな。ちょっとした距離なら、自転車でも買った方がいい。電車やバスもあるからな」
なるほど、課金アイテムか。
今のところ必要無さそうだしどうでもいいな。
自転車は給料入ったら購入を検討してみよう。
もう1つ気になる事ができたので質問してみる。
「道路とか信号もちゃんとあるのに、車やバイク全然走ってないですけど何でです?自転車より便利じゃないですか?」
ちょっとした遠出ならバスや電車に乗るより、気楽でいいだろ。
今日ほぼバスしか見てないんですけど。
「それはだな。一般家庭にはあまり必要ないからだ。神界で仕事をするやつは大体職場の近くに住んでいるし、異世界の収入で生きるのに充分なら移動しなくてもいい。端末で娯楽は事足りるしな。なにより、車やバイクが高い。安くても50ccのバイクが100万、車が500万、ガソリンが1L1000円だ。金持ちか、好きなやつしか買わん。運転したいならレースの異世界もあるぞ?報酬が高めに設定されているからか、楽に稼ごうとした馬鹿がよく事故って死んでいるがな!」
高いなおい。
創造神様は車もバイクも嫌いなのかね。
そんで神は出不精っぽいと。
「ほら、着いたぞ。右側が男子寮だ。中のエントランスで扉の登録をするといい」
色々と説明を受けているうちに男子寮に到着。
近くで見るとそこそこ立派な作りをしている気がする。
攻略課にいる間は無料で住めるけど、本当なら家賃いくらするんだろうね。
入口で暗証番号を入力して中に入り、何も入っていない郵便受けを確認。
扉の登録も完了。
エレベーターに乗り、最上階を目指す。
「そういえば、シンさんもここに住んでるんですか?攻略課なら無料で住めますし」
「昔は住んでたんだが、今は実家だ。親父が立派な2世帯住宅を建てやがってな。お袋が1人では寂しいだろうと、忙しくて家にあまり帰らない親父に代わって、無理矢理戻らされた」
「そうなんですね。…なんか俺のせいで支部長が更に忙しくなってそうですね。なんか悪い気が…」
「気にするな。親父が忙しいのは俺がガキの頃から変わらんよ。それに、黒石君が攻略課で頑張れば親父の仕事も減るだろうさ」
ミツイ家にはこれからお世話になりそうだ。
あとで菓子折りでも準備しておこう。
「出来るだけ頑張ってみますね。あ、ここの1508です」
「おう、お邪魔するとしよう」
朝の仮宿とは違う、自分の部屋になった場所に帰宅した。
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