第17話 帰還
扉から一歩踏み出すとすぐに応接室に着いた。
テテテテッテッテー♪どこでもドア〰️。
「たっだいまー!おまたー!ニア!」
「おかえりなさい、黒石さん。お疲れ様でした。初の異世界攻略はどうでしたか?」
テンション高めに戻ってきたら、ソファーに腰掛けたダンディのお迎え。
マイ女神様の姿が見当たらない。
「あっ、支部長。黒石幸、ただいま戻りました!異世界は楽しかったです!スキルもドカーンって、かなりイイ感じでした!」
自分の語彙力の無さに呆れるね。
小学生の遠足の感想かよ。
徹夜明けのナチュラルハイになっているような状態なので頭が働かないんですよ。
「ハハハ、それは良かった。お疲れでしょう、良かったら座ってこちらを召し上がってください。ニアちゃんが戻って来たら、ちょっとだけお話ししましょう。それが終わったら、食事もご用意しますので」
ニアはトイレかな?
俺は土管の裏で放出したから大丈夫だけど、ニアは我慢してたのかもしれないな。
もうちょっと時間をかけて攻略してたらどうなってたんだろう。
妄想がはかどるわー、ぐへへ。
変態的思考に犯されそうになったが今はそれよりも、テーブルに置かれたドーナツが並んだ皿だ。
定番のオールドファッションから、ちょっとリッチなやつまでズラリと並んでいる。
これ食べていいのか、ぱないの!
ニアが戻って来た時に準備してくれたのか、ペットボトル飲料も何種類か置いてある。
それに後でちゃんと食事も準備してくれるとか支部長マジ神だわ。
うん、神なんだけどね。
「有り難く頂きます!…旨い!さっき胃の中の物全部出してきたんで生き返りますよ!支部長、ありがとうございます!」
ドーナツに齧りつき、ポカ◯で流す。
疲れてる時の甘い物って最高だよね。
「いえいえ、遠慮なく召し上がってください。胃の中の物を戻してしまったという事は、黒石さんはキノコの目玉でも潰してしまったんですか?」
「色々あってニアにぶっかけられたんですよ!悪気は無かったので全く問題無いですけどね!」
ニアにぶっかけられた…いい響きだな。
なんだかもう一度お願いしたくなるような気がする。
次回は謎汁じゃない汁でお願いします。
「ニ、ニアちゃんにですか…何があったのかは分かりませんが大変でしたね…。ニアちゃんもそろそろ戻ってくると思うのですが…少し遅いですね」
「まぁまぁ支部長、女性のトイレは時間がかかるっていうじゃないですか!気長に待ちましょうよ!異世界でずっと我慢してたのかもしれないですし!もしかしたら久しぶりのお通じの可能性もありますしね!遅くなっても何事もなかったかのように迎えてあげましょうよ!」
「く、黒石さん…そんな大声で話しては外まで聞こえますよ…」
大声で話していると応接室の扉が開き、ニアが戻ってきた。
すたすたとこちらに向かって歩いてくる。
「ニアおかえりー!先にドーナツ食ってたぞ!無くなる前に戻ってこれて良かっ…グハッ!」
右のほっぺにクリティカル、遂にグーが飛んで来たぞ。
あちゃー、また俺なんかやっちゃいました?
「…あんたさぁ、もうちょっと考えて口を開いた方がいいよ」
冷たい目がいいね、唾でもかけてくれたらバッチリだったかな。
「ご忠告、ありがとうございます!ニアもドーナツ食べなって!腹減ってるんだろ?どれにするよ!」
ソファーに倒れこんだ体をお越し、ドーナツの皿を手に取りニアの前に出す。
「メンタル強いなー…まぁ、食べるけどさ。その前にちょっと席詰めて、座れないじゃん」
席を詰めるだと…俺の隣に座るって事?
てっきり支部長側のソファーに座ると思っていたのに。
「俺、謎汁で汚染されてるから隣に座ると多分臭うぞ」
「あっ、そうだった。支部長、ちょっと詰めて」
おや?あたしのせいだから気にしない、とか言って隣に座ると思っていたのだが。
異世界で上がったと思われる好感度がさっきの発言で下がったのかしら?
某ときめくゲームの(悪い印象を与えちゃったかな)みたいな感じで。
「うん、それじゃ面子も揃った事だし話を始めようか。小難しい話は明日にするから、今からするのは黒石さんの寝泊まりする場所の話だね」
「ん?今日はあたしの部屋の床にでも寝かせるつもりだったけど。女子寮だけど使徒なら大丈夫なはず。壁薄いからコウが変な事しようとしても、叫べばなんとかなるっしょ。そもそもコウはそんな事しないと思うし。ムッツリスケベではあるけど」
女子寮だと…なんて甘美な響きだ。
男でも女子寮で寝れるとか使徒ってどんな立場だよ。
会ったばかりの男を自分の部屋に泊めるのは感心しないが、信頼されてると思うと少し嬉しい。
ニアの言う通り俺はムッツリスケベではあるが、深い関係になるまでは時間をかけたいタイプだ。
お互いに信頼度、友好度、好感度高水準のラブラブイチャイチャ状態で事に及びたいのです。
古臭い考え方かもしれないけどね。
「はぁ,,やっぱりね。駄目だよ、ニアちゃん。確かに女子寮に男の使徒は泊まれるけど、申請して認められた使徒だけね。滅多にある事じゃないし、審査に何日もかかるんだよ?もし今日黒石さんを泊めて、それがバレたとしたら、確実に退寮処分になるだろうね」
「え?先輩がたまに泊めてるから大丈夫だと思ってた」
「先輩…あぁ、あの娘達ね。ニアちゃんと黒石さんもあのくらいの仲になれば審査に合格すると思うよ」
「冗談キッツいです。絶対無理」
ニアの言う先輩と使徒の仲がどんなものか気になるが、今は俺の寝床がどうなるかが問題だ。
こっち来てから地面でしか寝てないので、そろそろ布団で眠りたいです。
「そこで私から提案です。黒石さん、男子寮の部屋を準備したんですけど、今日はそこに泊まるのはどうですか?お風呂も付いてますし、着替えも準備してありますよ」
「えっ、いいんですか!?ぜひお願いします!」
「ちょ、あたしの部屋シャワーしかないんだけど。支部長、もしかしてそこエリート部屋?」
「うん、まぁそう呼ばれてる部屋だね。豪華とかそういう訳ではなく、独身寮にしては広いというだけなので気兼ねなく使ってください。食事の後に案内しますね。では、今日の話はここまでにして、後は明日にしましょう。時間と場所は、午前10時にこの応接室にしますか。黒石さんは部屋にお迎えに行きますので、10時前に準備だけ終わらせておいていただければ。ニアちゃんも明日は10時にここに来ればいいからね」
『了解(しました!)』
「それじゃ、食事にしようか。何かリクエストはあるかな?今日は二人へのお祝いとして私の奢りだから、何でも構わないよ。ショップに売っている物ならね」
ショップに売ってる物って何よ?
「マジで!支部長太っ腹じゃん!あたしは寿司で!一番高いやつ!コウもなんかリクエストしてみ?ショップなら地球の食べ物色々揃ってるし、好きなの食べれると思うけど」
マジかよ、出前みたいな感じ?
別々の店に頼んだら時間バラバラになりそうだな。
「じゃあ、俺もニアと同じ物で。寿司好きなんですよ!」
「ハハハ…二人共容赦ないね。じゃあ、特上寿司二つね、飲み物は?」
「あたしは飲み物ここにあるのでいいよ。コウは?せっかくだしお酒でも頼んだら?」
酒かー、飲みたいけど今はいいかな。
なんだかちょっと落ち着かないし。
「お酒は遠慮しとくよ、疲れてるし飲んだら寝ちゃいそうだ。俺もここにある飲み物で大丈夫です」
「落ち着いたら気兼ねなくお酒を飲める場を作りますから楽しみにしていてくださいね。それと、レイ様からお小遣いと言われて預かっているお金がありますので、後でお渡しします。部屋でゆっくり嗜好品を楽しんでいただいて構いませんから。それなら酔って寝てしまっても気を使わなくてすむでしょう?では黒石さん、説明がてらショップで買い物をするので、私の端末を見ていてください」
やったぁ、ロリ女神からお小遣いを貰えるみたいだぞ。
…あっちの方が歳上なのは分かっているけどなんだか情けない気分。
やっぱ年配の人は細かいとこまで気が利くんだな。
支部長もなんとなく分かってるみたいだし。
とりあえず支部長の端末を見る為に移動する。
「では始めますね。まず、このショップのアイコンを押します。そうするとスキル等色々な項目がでます。今回は寿司なので食品を選んで…あいうえお順で探してもいいのですが少し面倒なので検索で特上寿司と入力して…はい、出ましたね。一番高いやつを選びます、数量は2つと。そして購入を押せば完了です。注意事項はお金が端末に入ってないと買えないのと、キャンセルは一分以内でしかできない事ですかね。後は地球のネットショップとたいして変わらないかと。簡単なものでしょう。後で試してみてくださいね」
ショップでの買い物は俺でも余裕そうだ。
というか、特上寿司1つ100000円って見えた気がするんだけど。
ニア、マジで容赦ないね。
「あの、本当に特上寿司奢って戴いていいんですか?俺のはキャンセルして別のでも…」
「あたしはキャンセルしないよー」
「いいんですよ!お気になさらず、私もレイ様から結構な報酬を戴いたので。あっ、レイ様からのお小遣いを渡しますので端末を出してください」
「そうですか、ではお言葉に甘えてご馳走になります!端末ですね!はい、出しましたけど」
支部長がなにやら端末をいじっている。
ぼーっと見ていると支部長の手に諭吉さんが現れた。
完全に日本国紙幣である。
「レイ様から預かっていた50000円です。黒石さんの端末のお財布と書かれたアイコンを押していただいて,,次は入金を,,はい、これでショップで買い物ができますよ。取り出す時は出金を押して金額を入力すればできますので。それと、レイ様からの伝言です。「あんまり無駄遣いしちゃ駄目だよー」、だそうです」
端末に諭吉さんが5人吸い込まれていくのを見守り、ロリ女神に感謝の祈りを捧げる。
ありがとう、マジ感謝、この借りはいつかお返しします。
届け、この想い!
「レイ様のメアド教えるからちゃんとお礼いいなよ。今日はもう遅いし、迷惑になるかもだから明日ね」
祈らなくても想いを伝える方法がありましたね。
俺って、ほんとバカ。
「お、来ましたね。黒石さん、この銀色の扉を見てください。寿司が届きましたよ」
支部長の横の空中に浮かぶ、縦横50㎝位の銀色の扉、下から上に開くタイプの荷物用エレベーターみたいな扉を開け、寿司を取り出す支部長。
寿司を取り出し、扉を閉めるとそれは消えてしまった。
「購入した物が届くとこの様に扉が現れますので、ちゃんと受け取ってくださいね。扉のサイズは購入した物によって変わるので、大きな物を購入する時は広い場所で買い物するといいですよ。さて、寿司も届きましたのでどうぞ召し上がってください」
見るからに高級な寿司が入った寿司桶がテーブルに置かれる。
幸せな気分に浸りながら寿司を完食した後。
お腹が満たされたからか眠そうなニアと別れ、支部長と男子寮へと向かった。
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