第2話 日本
休日の少し洒落たレストランの休憩中、そこの厨房からホールを覗くと目当ての人物に声をかける。
「池田君、確認だけど今日の歓迎会って来れるよね?」
先月バイトに入ったばかりなのにもう看板息子のイケメンだ。
「出席するに決まってるじゃないですか!僕の歓迎会なのに行かないなんてありえないですよ!」
何人もの女を落としてきただろう爽やかスマイルが眩しい。
「いやー、池田君来るなら出席するって女の子多くてさ。後、その女の子狙いの男も。俺、一応幹事だから。ちょっと不安になってね」
正直、超面倒臭い。
「夜勤終わって池田君がまだいるなら参加するから絶対帰らせるな!」、「二次会に絶対池田君参加させてくださいね!友達が池田君と会ってみたいって言っててぇ♪」などと抜かす色ボケ女くたばれ。
しかも店を予約する為に確認をすると「えー、○ちゃんと×とかもー、来るかもって言ってたからー、ちょっとわかんないですー。多くて5人でー後はー、池田君次第ってのもあるしー、お任せしますー。」や「え、この店私嫌いなんですけど。雰囲気が合わないってゆーか池田君の歓迎会ですよ?もっと考えてくださいよ?」て感じ。
死ねばいいのに。
若者の陽キャが大半を占める店で、古参のおっさん隠キャは若干嫌われていた。
無理矢理幹事を押し付けられたのだ。
仕事が終わり、一番乗りで会場に着くと少し遅れて本日の主役、イケメンがやって来た。
予定の時刻まではまだあるので喫煙室に行く事を伝えると何故かイケメンも一緒に付いてくるとのこと。
「えっ、池田君タバコ吸うの?」
「最近吸い始めたんですよ。意外でした?」
「意外だねぇ。今のご時世タバコなんて嫌われるだけだからね。池田君みたいな爽やかモテモテイケメンのイメージとは違うって。彼女に怒られるんじゃない?」
「…これも意外かもしれませんけど、彼女なんていた事ないんですよね。正直、女の人がちょっと苦手で。嫌いではないんですけどね」
女性不信なのかね?ちょっと親近感。
「…意外だけどもなんでさ?っていうか池田君、まだ歓迎会始まってないけど酔ってたりする?」
シラフでトークするにはまだ早い内容じゃないか?
「実は仕事終わった後にストロング一本、イッキしてきました!黒石さんが女性多いって言うし緊張しちゃって。…なんか自分で言うのもあれですが、顔が良いからってグイグイこられるのも勝手なイメージ付けられるのも好きじゃなくて…タバコ始めたのはイメチェンっていうか反抗期ですかね!」
正直、いけ好かないイケメンだと思っていたがちょっと見方を変えることにした。
「んじゃ、今日は女性に池田君の近くにしろ!って言われてるけど、嫌がらせに池田君の近くはムサい男で固めるかな。」
「ありがとうございます!せっかくの歓迎会ですし気楽に飲みたかったので助かります!」
吸殻を灰皿に入れ、時計を確認する。
「まだ少し早いけど、そろそろ行こうか」
「そうですね!」
煙たくなった喫煙室のドアを開け、一歩踏み出すと、そこは青空が広がり、何処までも広がる草原だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます