プロローグ 花畑にて
それは、この地にはびこる──幼い子どもだけがかかる
三日続いた高熱の後、視力を失う。薬をすぐに飲めば、視力は回復する。だがしかしその薬は平民には手が届かないほど、高価なものだった。まして、貧しい農民は望むことすらできなかった。
だから、その病が
(私も、永久に……見えなくなってしまうの?)
ふらふらと歩きながら、少女は心の中で問いかける。神にか、それとも
何も、見えない。
熱は下がったが視力を失っているため、外に出るなとは言われていた。しかし、ベッドでじっとなんてしていられなかった。
手さぐりで、ぶつかりながら、転びながらも
そうだとわかったのは、
農作業が
今は夜ではないらしいけれど。広がるのは闇ばかりだから、日光の下で
「ううっ……」
泣き続けていると、馬の
「君、どうしたんだい、そんなに泣いて」
「……目が」
「目? ……もしかして、流行り病……モルク病かい?」
「はい。もうすぐ、私の目は永遠に見えなくなる……」
口に出すと
「薬を飲めば、間に合うかい?」
「多分……」
「そうか。少し、ここで待っていてくれないか? いいね、絶対だよ」
言い
どうせ家に帰る気もしないのだ。待つことは、苦ではなかった。
芳しい香りを
「お待たせ。さあ──これを」
先ほどの男性だ、と声で判断した時、手に何かを
「これは、何?」
「モルク病の薬だよ」
「そんな、高価なもの!」
「いいから、受け取ってほしい。君の目が治るよう、
ふわり、いい
キスされたのだ、と自覚して
「家まで、送ろうか」
男性はそう申し出てくれたが「将軍! そんな
「もう時間がないんですから!」
「──全く。この子を送るぐらいの時間はあるだろう」
「ありません。むしろ
「やれやれ。君、
「だいじょうぶ。あり、がとうございます」
ふふ、と男性は笑っていた。
「どういたしまして。じゃあ、いつかまた」
少女は薬の
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