味のある本


「なあ熊さん、あんた読書は好きか?」


「読書だ? 自慢じゃねえがそんなもんした事ねえよ、八っつぁん」


「たまには本でも読んで、教養を身につけなてんだ」


「何言ってる。そう言う八っつぁんこそ読書家のイメージないけどな」


「最近変わったのよ、おいらはもう読書家さ、とても味のある本を最近見つけてな、試しに貸してあげるから味わってごごらんよ」



 ――翌日。


「どうだい、なかなか味のある本だったろ熊さん」


「悪いが、八っつぁん、全然面白くないね。この本、味も素っ気もないよ」


 と熊さんの駄目だし。


「そりゃ、熊さん。本の味わい方が違うのよ」


 そう言うと、八っつぁんがその本の表紙をぺろりと舐めてニヤリと笑った。


「……?!」




                END

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