第53話 新しき世界の胎動~総統ユリウスの花嫁
「父上、総統が花嫁をめとったという情報が、今日、私のもとに届きました。
本当ですか?」
マルデク情報省長官オスカー・フォン・ブラウンは、マルデク元老院の重鎮にして、総統ユリウスを幼き日から知り、ユリウスの親友でもある父に問うた。
「秘密にしていたのだが、ついに漏れたか・・・」
と父はオスカーに言った後、
「本当だ」
と告げた。
「花嫁は、私の知るものですか?」
と張り詰めた表情で問う息子に、
「そうだ」
と父は静かに告げた。
「エルフィンですか?」
一時期、エルフィンに息子が熱を上げていたことを知っていた父は、それでも迷わず、「そうだ」と、告げた。
「エルフィンは未分化だったはずです。
まさかエルフィンを捕まえて、総統は遺伝子操作をしたのですか?」
「いや、違う。お前は誤解しているようだが、ユリウスは愛するものに対しては、そのような卑怯なことはしない。
エルフィン将校は地球で自然に変性したらしい」
「お前との婚約を破棄しオリオンと地球へ駆け落ちをした、あのアメリア姫が、地球からエルフィンを連れ帰り、総統に献上したのだ」
と、父は苦々しげにそう言った。
「その時、エルフィンは傷だらけで、瀕死の重傷を負っていたらしい。
そのエルフィンに対して、ユリウスは自分の血の半分を分け与え、エルフィンを救ったのだ」
そう告げた後、父は息子にある事実を伝えた。
「マルデク王家には、しきたりがある。マルデク王家の血統を守るために、血の婚礼儀式というものがあるのだ。血を分け与えるということは、すなわち結婚を意味する」
と父はオスカーに告げた。
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