第40話 想い遙かに~エルフィンと帝国軍総統ユリウス ①
「総統、あの噂のアメリア姫が、面会を願いでておりますが、どう致しますか?」
「アメリア姫? あの兄の妻を人質にして、婚約者であるオスカーの部下と駆け落ちしたという、あの噂の姫か?」
総統ユリウスは唐突に現れた噂のアメリア姫に、驚きながらも興味を示した。
「そうです。ぜひ総統にお会いしてお渡ししたい、大切な土産があると、申しております」
アメリアの駆け落ちは、妻を人質として連れ去られたアメリアの兄が大騒ぎしたことにより、マルデクでは誰もが知る、大スキャンダルとなっていた。
その噂の姫が、ひとりでマルデクへ舞い戻り、土産を持ってきたというのだ。
退屈していた総統は、もちろん面白がってアメリアを謁見の間へ招き入れた。
アメリアは、供のものに大きな箱を運ばせながら、謁見の間へと入ってきた。
「これはまた、大きなお土産だな。
私のために地球の美しい少年でも持ち帰ったのか?」
「はい。総統がずっと、そのものを探し求めていると聞いたので、地球まで探しに行って参りました」
総統はその時になって初めて、その箱の中身に興味を示した。
「ただお願いがあるのです。この箱の中身が気に入ったならば、この箱の中身を、絶対に、手放さないでください。
実はこの箱の中身をほしがっている者が他にもいて、なかなか手放そうとしなかったのです。
きっと奪い返しにくるはずです。その時のために、私の信頼する部下をひとり護衛として、お貸しいたします」
そしてアメリアは大きな箱のふたを開けたのだが、その中身に、総統さへも目を疑った。
傷だらけのエルフィンが、手足の自由を奪われ、血だらけのまま、箱の中に収められていたのだ。
「総統の代わりに、主人を裏切ったペットに私がお仕置きをしておきました。
この者は総統を裏切り、あろうことか私の恋人に手を出していたのです。
私の恋人に色目を使い、誘惑して、地球へ逃げ込んでいました。
この者は死罪に値する重罪人ですが、総統の愛するペットゆへ、これぐらいのお仕置きで我慢いたしました」
総統ユリウスは、死んだように動かないエルフィンに驚き、すぐ医官を呼び治療にあたらせた。
その時になって初めて総統ユリウスは、自分がエルフィンをいつの間にか愛していたことに気づいたのだった。
そして恋に狂ったアメリアの狂気を帯びた行動を目の当たりにして、総統ユリウスは、愛する者たちを失い、心の闇に囚われた自分が行ってきた愚かな行為の数々を思い返し、戦慄した。
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