第36話 エルフィンとハンネス~想い遙かに ①
アメリアはハンネスをマルデクへ連れ帰るための作戦を、オスカーにも内緒で
初めから立てていた。
アメリアは自分に忠誠を誓うマルデク王家の武官を、秘かに地球に潜伏させていた。その武官がエルフィンとハンネスの地球での潜伏先を調べ上げた上での、オスカーへの計画持ちかけだった。オスカーの人脈をも利用して、作戦の成功を盤石なものにしようとしたのだ。
アメリアは初めからハンネスとエルフィンが、どこにいるか知っていたが、オリオンには黙っていた。それゆへ、いつまで経ってもふたりの居場所を、突き止めようとしないオリオンの態度に、苛立ちもしたのだ。
オリオンはオスカーの腹心ではあったが、アメリアの腹心では無い。
ただアメリアが怪しまれずにハンネスに近づくには、オリオンが必要だった。
しかしせっかく会えても、ハンネスはエルフィンのことでいつも頭がいっぱいで、アメリアがその心に入り込むことは、オスカーが言ったようにまったく不可能だった。
アメリアは計画を変更せざるを得なかったのだが、そのような時に偶然、エルフィンの変性の兆候を知ったのだった。
オリオンはマルデクでも五本の指に入るような優秀な武官で、エルフィンとも旧知の仲だった。ハンネスはエルフィンが変性期にあり、フォースが使えなくなっていることをオリオンには打ち明けた。そして秘かにエルフィンの護衛を頼んだ。
オリオンはアメリアの本当の狙いを知っていたので、エルフィンの変性をとうぜん隠していたが、オリオンやハンネス、ジャド師、そしてミカエルのいつもと違う様子を見て、勘の良いアメリアは何か異変が起ったことに気づいた。
そしてじきにエルフィンが変性期にあり、フォースを使えなくなっていることを
知ったのだった。
「どう思う? 今のエルフィンならば、私でも勝てそうか?」
「姫さまでは、やはり無理かと・・・。エルフィンは見かけはか細く、あまり強いように見えませんが、あれで歴戦錬磨の武官です。
ただ、姫さまの話が本当で、フォースが使えないのならば、私ならば簡単に勝てるはずです。エルフィンの側に張り付いて離れない、あの武官オリオンを遠ざけてくだされば、私がエルフィンを拉致し、ここから連れ去ることも可能でしょう」
「宇宙船は手配してあるのだろうな?」
「もちろんです。ヨハネ司令官の時代に潜入させた部下が、今、補給船のキャプテンをしております。その補給船でエルフィンをマルデクまで運べます。
エルフィンは賞金付きで総統が指名手配している逃亡犯ですから、宇宙防衛軍の補給船であろうとエルフィンの姿を見せれば、マルデクへの着陸を許可するはずです」
「総統は喜ぶであろうな。エルフィンを表向きは、かつてのお気に入りと同じで
ペット扱いしていたが、明らかに総統はエルフィンにぞっこんだった。
あの事件のあと、殺さなかったことからもそのことが良くわかる」
この計画が成功すれば、アメリアは総統に貸しを作れ、その上、ハンネスをマルデクへおびき寄せることも可能になるのだった。
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