第31話 武官オリオンがジャド師に尋ねたことは・・・

「ジャド師さま、私の知り合いで、師にお会いして、教えを請いたいと申しているものがおります。

 そのものに会って、少し相談にのってやってはいただけませんでしょうか?」

と、エルフィンは研究室のジャド師に聞いた。


 振り返ったジャド師の目に、ひとりの精悍な青年の姿が飛び込んできた。

 初めて見る顔だった。


「マルデクで私の同僚だった、武官オリオンです」

とエルフィンはジャド師に、オリオンを紹介した。


 青年は真摯なまなざしで、ジャド師に言った。

「ジャド師さまは、あのシャンバラ出身だと、聞いております。

 時の輪と輪廻転生について教えていただきたいのです」

と、思い詰めた表情で青年はなおも続けた。


「実はこの星には3人でくる予定だったのです。

 しかし旅の途中で、ひとりの者を見失ってしまいました。ワープトンネルを抜ける途中で、その者は時の輪の渦に飲み込まれてしまったのです。

 もはや永遠にあの者を助け出すことは不可能なのでしょうか?」


「その時の状況にもよりますが、運が良ければ、その魂は輪廻転生を繰り返すはずです。あなたに、どのような理由があるのか分かりませんが、その魂に再び出会うことは、かなり難しいことですが不可能なことではありません」

とジャド師はオリオンに言った。


「ありがとうございます。これで少し、希望がもてます。

 ありがとうございます」

とオリオンは少し涙声でジャド師に礼を言い、深々と頭を下げた。


 オリオンはその時まで、自分でも気づいていなかったのだが、一緒に旅をするうちに、ルカの素直さとその美しさに魅せられ、知らないうちに恋をしていた。

 失敗した任務を挽回したいからではなく、自分の見失った恋をまた取り戻りたいのだといことに、オリオンはそのとき、初めて気づいた。



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