第16話 ミカエルとエルフィン 第1章 再会 ②

 ハンネスはエルフィンに、自分のエナジー・フォースを分け与えた。

 この治療方法は、分け与えた者はかなりの体力を消耗する危険なもので、数日はダメージが残るものだった。しかし身ひとつでワープトンネルを脱けてきたため、他に治療道具は無く、それが今できる唯一の治療方法だった。


 治療を終え、顔を上げたとき、ハンネスは初めてミカエルがすでに側まで来ていたことに気づいた。


「フォースの使い手に、普通、銃など役にたたないのだが、お前はけが人を連れている。この至近距離でフォースは使えまい」

と言って、ミカエルはハンネスの頭に銃を突きつけた。


「お前たちは、何者なんだ? どこからやってきたか答えるんだ」


「マルデクからやってきた」

と、ハンネスは素直に答えた。


「マルデクは我々の敵である帝国軍の中心惑星だが、そこからやって来たと言うのか?」


「そうだ。その帝国軍から離脱してきた。助けてほしい」

ハンネスはミカエルに率直に言った。


「それでは、どんな罪を犯して、この惑星へ逃げてきたんだ?」


「何も罪は犯していない。ただ総統の怒りを買っただけだ」


 その答えに、ミカエルが納得するはずはなく、よりいっそう警戒のまなざしを2人に向けた。


「帝国軍の総統は、女嫌いで、彼のような美しい男が好きなのだ。

 彼は総統の1番のお気に入りだったのだが、事情があって、ある女性に会いに行った。その行為が、独占欲の強い総統の嫉妬心をあおってしまい、怒りを買ってしまったんだ。ただそれだけのことだ。罪を犯して逃げてきたわけではない」


「何だと? そんなことで、帝国軍を離脱し、逃げてきたのか?」

と云うと、ミカエルは意外な答えに、あきれて笑ってしまった。


「笑い事ではないんだ。総統は今までお気に入りだった部下を、独占欲と嫉妬心から、全員、最後には殺しているんだ」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る