第12話 帝国軍からの離脱 ②
星空を見上げながら、エルフィンはハンネスに言った。
「そんなに多くはないけれど、シャンバラの最後の大神官ユダさまとは、何回か、
会ったことがある」
満開に広がる星空は、いつになく美しかった。
「ちょうど祖父が亡くなり、王位を継いだ父上が統治神<シ>との戦いに敗れ、敗走したころだ。母上は私と弟を連れて、なぜだか将軍家を出たんだ。その時、母を助けてくれたのがシャンバラの大神官ユダさまだった」
「父上と母上はあまり仲が良くなかった。と言いうより、母上が父上を嫌っていた。
そのせいで父上は、僕を嫌っているのだと思っていたけれど、たぶん父上は、本能的に感じていたんだろうな。僕が父上の子供でないことを・・・。
父上は僕にはつらくあたったけれど、弟のルカには優しかったから・・・」
「僕を拉致したものたちは、僕が将軍家の血を引く最後の正当な後継者だと思っていたようだ。だから僕を探し、捕まえて拉致した」
「でも、本当は弟ルカこそが、彼らが捜していた後継者だったのにね。
少女のなりをしていたルカを彼らは見向きもしなかった」
「母上がユダさまを見つめるまなざしは悲しげではあったけれど、幸せそうでもあったから、子供心に、母上はこの人を本当に好きなんだ、と感じていた」
「ユダさまは僕にもとても優しかったけれど、僕がユダさまの子供だとは、思っていないような感じだった」
「ユダさまは、たぶん知らなったと思う」
と、ハンネスはエルフィンに思ったとおりに伝えた。
「もう少し休んだら、行くぞ、エルフィン。
早く境界に、たどりつかなければならない」
そろそろ総統が、エルフィンががいないことに気づくころだった。
「もうすでに追手が放たれたかもしれない。急ごう・・・」
地球へ続く、ワープの入り口までは、まだかなりの距離があった。エルフィンは大きな傷を負い、回復したばかりだった。体の傷は消えていたが、病み上がりに変わりはなかった。
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