第59話 竜騎士になったはいいけれどの件
竜騎士になって三か月が経った。毎日、王国内の見回りや魔物退治といった職務を淡々とこなすだけの代わり映えのない日常が続いていた。
ヴィエイル教官長をうしなった日から、こころに穴が開いたような気がリュウトにはしていた。
永遠に埋まることがないようなこころの穴が。
そのこころの空っぽさを、穴を埋めようともがくのではなく、そういうものだと受け入れて、リュウトは時の流れに身を任せた。
三か月経って、リュウトは一人前の竜騎士になっていた。
王国内に出現する魔物に後れを取るようなことはないし、仲間たちともうまく連携が取れている。
飛竜の扱いも先輩顔負けの巧さになっていた。
――夢を叶えて、竜騎士になった……。
リュウトは今、シリウスに乗ってあてもなく空を飛んでいた。
――アリアはまだ帰ってこない。
異世界に来てからもうすぐ十か月になる。
――あのころと比べると、すごく強くなったよな、オレ。
ときどきふと考える。
竜騎士になる道で本当によかったんだろうか、と。
士官学校に入学せずに、元の世界へ帰る方法を探していたら、もしかしたら今頃帰れているかもしれない。可能性は高くはないが、ゼロではないはずだ。
しかし竜騎士となった今は、この異世界に自分の居場所がある。
やるべきことも、やりたいこともある。
元の世界よりも楽しい仲間たちがいる。
――だけど、オレの本当の願いって何なんだろう。
最近は、シリウスと二人で飛ぶことが多くなっていた。
――オレは、これでいいんだろうか……。
リュウトのこころの空洞は、ヴィエイルの死のみが原因ではなかった。
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