第18話 再会

モーグル王国から帰ってきて3ヶ月が過ぎようとしていました。


「マースさん、ご無沙汰してます。


あっ、その件については、損失をこちらで計上して処理しておきますのでご安心ください。


は、はいはい、分かりました。

ではまた何かありましたら、連絡下さいませ。


失礼致します。」


マースさんからトランシーバーでの連絡です。


商品に不良があったみたいで、帳簿上の計上方法についての質問でした。


マースさんの業務も順調に進んでいるようですね。





最近ヤーラさんの機嫌が良くありません。


モーグル王国へハリスさんが長期出張していることが原因のようです。


お互い素直になれば良いのですが………


ハリスさんはモーグル王国の警備隊を任せられる人が見つからないので、応援で行っています。


マックさんという方もまだ見つかっていないみたいです。


早く見つかって帰ってもらわないと、ヤーラさんが怖いんですけど。






モーグル王国に来てからもう2ヶ月以上になる。


警備隊の隊員は揃ってきたんだが、肝心の隊長が見つからない。


マックって奴を探しているんだが、なかなか見つからないんだ。


一応、奴が寄りそうなところには連絡してくれるように頼んでいる。


そろそろ連絡がきても良さそうなもんだが。




「ハリスさん、いるかい?」


「やあ、マハラさん。

どうしたんだい?」


「この前、マックが来たら教えてくれって言ってただろう。

マックが来たんだよ。」


「待った甲斐があったぜ。

マハラさんありがとう。

で、何処に行けば良い?」


「儂の店で待たしてあるよ。

そんなに急がんでも大丈夫だよ。」


俺は、マハラの爺さんを抱えるように、急いで爺さんの店に走った。


店先にしっかりとした身体つきの男が立っている。


「ぜぇぜぇ、そんなに急がんでも……


ハリスさん、彼がマックさんだよ。」


「カトウ運輸のハリスと言います。

マックさんですね。」


「はあ、そうですが。

何か俺に用があるとか。」


「マックさん、少し時間が欲しいんですが、都合はいかがですか?」


「あと3件廻ったら最後にカトウ運輸に納品に行く予定です。」


「だったら、カトウ運輸の食堂はご存知ですか?」


「ええ、良く利用させてもらってますから。」


「なら、食堂で待ち合わせましょう。

俺が奢りますから。


おばちゃんに伝えておくので、おばちゃんに来たことを伝えて下さいね。」


マックとは、手を振ってその場は別れた。



夕刻、食堂のおばちゃんがマックが来たことを伝えに来たので、食堂に急ぐ。


マックは席に座って待っていた。


「すまない、遅くなってしまった。」


「いえ俺も今来たところです。」


「とにかく飯にしようか。

何でも好きなのを頼んでくれ。」


俺達は、持ちきれないくらいの料理を机に置いて、向かい合って座った。


「食べながら話しをしようか。」


俺は自分がカトウ運輸の警備課長であること、モーグル王国の警備隊を訓練中であることを伝えた。


「それでだが、マックさんにモーグル王国内のカトウ運輸警備隊長をお願いしたいんだ。」


「俺が警備隊長?それは無理だな。」


「どうして?」


「俺は記憶喪失なんだよ。

3年前までの記憶が無いんだ。」


「それは日常生活に支障があるのか?」


「それは無い。言葉は分かるし身体も動く。

法律とか規則もこの3年間で覚えたつもりだ。」


「なら問題ないだろう。」


「しかし、過去が分からない男なんて雇うわけ無いじゃないか。」


「カトウ運輸はそんなこと気にしないさ。


働いている者のほとんどが、元奴隷だったり、スラム出身だ。


俺なんて、山賊の頭だったからな。」


マックは、かなり驚いていた。


「本当に俺なんかが働いて良いのか?」


「全く問題ない。働いてくれる気になったか?」


「ああ、よろしく頼む。」


その後、握手を交わした俺達はそのまま訓練所に移動した。


一応実技試験のつもりだったが、マックはかなりの手練れだった。


それもかなり修羅場を潜っているようだ。


「マック、お前強えな。傭兵か山賊の頭なんじゃないか?」


「分からないんだ。」


「まぁいいや。過去のことなんてな。よし合格だ。


カトウ運輸に入ったら、本社で研修してもらうが、すぐに行けるかい?」


「2日もらえれば大丈夫だ。」


分かった。


じゃあ、3日後の朝に支度をして、ここに俺を訪ねて来てくれ。


こうして3日後の朝、俺達は本社に向かった。




ヤーラさんの機嫌が良くなった。

ハリスさんが帰って来たのだ。


モーグル王国からは、警備隊長候補のマックさんを連れてきた。


「ミルクさん、ユリアちゃん、急ぐわよ。


ハリスさんが、お昼奢ってくれるらしいからね。」


ヤーラさんに急かされて食堂に入ると、そこにはマクベスさんが座っていました。

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