202010 ジャパロボ C

渋谷かな

第1話 ジャパロボC

「ギャアアアアアアー! ジャパロボが奪われたぞ!」

 事件は起こった。第5回全国ジャパロボ大会の予選と本戦の間に。

「なに!? 工場が襲われているだと!? 麻理子に迎撃に当たらせろ! ジャパロボを奪われる訳にはいかないのだぞ!?」

 直ぐに大江都知事にも報告があがる。

「おまえたちは何者だ!?」

 場所は東京都ジャパロボ開発機関。都庁所属のジャパロボパイロットの麻理子が自機の東京都ジャパロボ01改に乗って賊に対応する。

「我々は反大日本帝国同盟ジャパカイダのものだ。」

「反大日本帝国同盟!? ジャパカイダ!? そんな機関は初めて聞いたわよ!?」

「だって初めて名乗ったんだもの。アハッ!」

 恐るべし、反大日本帝国同盟ジャパカイダ。初任務が都庁の工場からジャパロボの強奪であった。

「ジャパロボを狙うなら、うちでなくて自衛隊を襲いなさいよ!?」

「だって向こうは警備が厳重なんだもの。」

 これが東京都ジャパロボ開発機関が襲撃された理由であった。

「要するに我が日本国に敗れた外国人の集まりでしょ?」

「外国人だけだと思うなよ! 見捨てられた日本人もいるのだよ! 日本人も!」

「なんですって!? どうして日本人がテロに加わるのよ!?」

「既得権益の無い者、甘い汁を吸えない者、コネの無い者、貧乏で相手にされない者、就職できない者たちが、今の大日本帝国を支持する訳がないだろうが!」

「な!?」

 大日本帝国の繁栄の恩恵がないものは反発感情を募らせていた。

「俺たちは、このジャパロボを外国に売って、国賓待遇で豊かに生きるんだ! お金に困らない生活をする! ご飯をお腹いっぱいに食べるんだ!」

 哀れな日本人たちだった。

「渡すぐらいなら、あなたたちを破壊します!」

 麻理子は単騎でも戦うつもりだ。

「やれるかな? 俺たち10機を相手にして!」

 強奪されたジャパロボは10体。

「斬撃モード起動。」

 麻理子のジャパロボの剣が赤く光りだす。

「ドカーン!」

 1機のジャパロボが大破した。

「な、なんだ!?」

 ドカーン! また1機ジャパロボが大破した。

「ビームか!? レーザーか!?」

 ドカーン! 3機目が破壊された。

「飛ぶ斬撃だと!?」

 麻理子のジャパロボが剣から斬撃を飛ばすのを目撃するテロリストたち。

「これが都庁の最新鋭ジャパロボの兵器。飛ぶ斬撃、秘剣! ユリカモメだ!」

 ユリカモメは東京都の鳥です。

「4機! 5機! 6機!」

 次々とユリカモメを飛ばして大破したジャパロボを倒していく。

「飛び道具とは卑怯な!?」

「おまえたちのテロ行為の方が卑怯だろうが! 飛ぶ斬撃だけだと思うなよ!」

 麻理子は敵に加速して突進していく。

「7機! 8機! 9機!」

 あっさりと接近戦で敵を斬り倒す。

「ムムッ!? 1機足りない!?」

「先に1機は逃がしたのさ。」

「なに!?」

「変大日本帝国同盟ジャパカイダに栄光あれ!」

 ドカーンとコクピットで爆弾で自爆してみせるテロ隊員。

「しまった!? ジャパロボを盗まれた!?」

 ジャパロボの強奪は成功してしまった。

 つづく。


「美味しい! 令和ちゃんの作るお味噌汁美味しいよ! これならどこにでもお嫁に行けるよ!」

 ある日の広瀬家の朝食の風景である。

「ありがとう。私、ロボットですから。アハッ!」

「誰かさんの殺人料理とは大違い。」

「zzz。」

「・・・・・・お母さんが寝たふりをしている。」

 掴みはOK。

「前代未聞の大ニュースです!」

 テレビからニュースが流れてくる。

「昨夜、東京都ジャパロボ開発機関、通称、都庁が何者かに襲われて、ジャパロボが1機、盗まれてしまいました!」

「なにー!?」

 寝ていた祐奈が目を覚まして立ち上がる。

「アチイー!? アチチッチ!?」

 そしてみそ汁で火傷した。

「なお、テロリストは反大日本帝国同盟ジャパカイダと名乗った模様です。」

「聞いたことがないな? 中東のテロ組織のアルカイダの日本版かな?」

「悪の秘密結社ショッカーみたいに、ジャパカーとかの方がカッコ良かったんじゃないかな?」

「何を呑気な!? 初めてジャパロボが外部組織に盗まれたんだぞ!? これは由々しき事態だ!?」

 祐奈は一人で焦りまくっている。

「今回の事件でどういうことが考えられますか? ジャパロボ専門家さん。」

「そうですね。ジャパロボの技術情報の流出の懸念がありますね。他国は日本産のジャパロボみたいに人型ロボット兵器の開発ができませんでした。しかし、既に朝が迎えるまでに、世界のブラックマーケットでジャパロボの開発ベースの情報は高額な金額で売買されてしまっているでしょう。今後、我が大日本帝国は世界各国が独自に開発してくるジャパロボと戦うことになるでしょうね。」

 衝撃のニュースが続いている。

「例えば、どんなジャパロボですか?」

「そうですね。アメリカならアメロボ。自由の女神とかを装備してくる可能性が高いですね。エジプトならスフィンクスやピラミッド装備のエジロボですかね。韓国ならBTSアイドルのカンロボとか作れますね。」

「それはコンサート用のジャパロボでしょう。」

 そのニュースを聞いたさとみは。

「さとみちゃんジャパロボも作ってくれるかな?」

「アホな想像はやめなさい。我が妹ながら恥ずかしい。」

「でもイリスちゃんジャパロボも販売されるかもしれませんよ。」

「痛車じゃなくて、痛ジャパロボね。」

 横で祐奈が秘書の麻衣に電話する。

「麻衣!? ジャパロボが盗まれたぞ!? どうして昨夜、私に連絡しないんだ!? 私が出撃すればテロリストなど簡単に退治したのに!?」

「はあ!? 電話しましたよ! 着信を見てください! 私からの着信が100件以上あるでしょうが! どうせ! 祐奈教官は寝ていて起きなかったんですよ!」

「あ、本当だ。アハッ!」

 スマホには大量の着信履歴があった。

 つづく。


「ここは任せろ!」

「結子お姉ちゃん!?」

「先に行け! みなみ! 後のことは任せたぞ! 私たちの様に恵まれない人々の希望の光になるんだ!」

「結子お姉ちゃん、また生まれ変わっても姉妹に生まれようね。」

「ああ、約束だ。私たちは離れ離れになっても永遠の姉妹だ。」 

 こうして昨夜、1機のジャパロボが盗まれた。

「zzz・・・・・夢? 嫌な夢。」

 一人の少女が悪夢にうなされ涙を流しながら目を覚ます。

「お姉ちゃんの死は絶対に無駄にはしない。」

 反大日本帝国同盟ジャパカイダのリーダー、前田みなみは姉を殺した大日本帝国に復讐することを誓う。

「敦子、首尾はどうだ?」

 工場に移動したみなみ。

「おはようございます。みなみさん。」

 反大日本帝国同盟ジャパカイダの隊員の高橋敦子。

「昨夜のうちにジャパロボのデータ分析を終えて、世界中に無料で人型ロボットが作れるデータをバラまきました。」

「それでいい。我々の目的はお金ではない。ジャパロボのデータが世界中に広がればいい。そうすれば大日本帝国の植民地で奴隷と成り下がった世界の人々を解放することができるだろう。」

「さすが、みなみさん。」

「私たちは大日本帝国さえ倒せればいいのだからな。他には何も要らない。」

「カッコイイ! どこまでもついていきます! みなみ様!」

 テロ集団のリーダーみなみには団員を引き付けるカリスマ性があった。

「こらー! 私たちはアイドルを目指しているんじゃないんだからね!」

 不格好なジャパロボからスピーカーで声がする。

「まだ骨組みだけか。」

「仕方ありませんよ。データは手に入っても、本格的にジャパロボを製造するのはこれからですからね。」

「由紀! まゆ! 私も手伝うぞ!」

「みなみ様!?」

「やめて下さい!? 油が飛び散って顔が真っ黒になっちゃいますよ!?」

「気にするな。優子お姉ちゃんと一緒にジャパロボを作ろうと真っ黒になりながら工具をいじっていたものだ。何も知らなかった、あの日までは・・・・・・。」

 あの日、みなみに何があったのだろうか?

「東京都ジャパロボ開発機関から奪ったジャパロボで一番興味があるシステムは、ブレイン・ウェイブ・システムだ。人の感情、人の想いをジャパロボに伝える脳波システム。人の気持ちの強さが、ジャパロボの強さになるのだからな。」

 祐奈が第2回全国ジャパロボ大会で覚醒してから脳波の開発研究が行われている。しかし未だに完成はしていない。

「第5回全国ジャパロボ大会までに間に合わせるんだ。」

「おお!」

「もしダメなら、また都庁にジャパロボを奪いに行くか。」

 反大日本帝国同盟ジャパカイダも大変なのであった。

 つづく。


「いくぞ! 祐奈!」

「はい! 綾教官! 命に代えてもお守りします!」

 自衛隊の軍の建物から綾幕僚長の車列が出発する。護衛をチーム祐奈が任された。そして祐奈自らがジャパロボに乗って護衛する。

「優子。周囲の警戒を怠るな。」

「はい! 祐奈教官の往年のパイロット姿が見れて光栄です。」

「だから私はまだピチピチの20才だって。」

 祐奈は20才の二人の子持ちなのだ。祐奈専用ジャパロボ・エンペラー。優子は自衛隊量産機を300パーセント増しで改造した、優子専用ジャパロボ自衛隊04改300%マシマシである。

「クスクス。」

「どうしたんですか? 綾幕僚長。」

 同じ車両に乗り込んでいる麻衣が尋ねる。

「祐奈も立派になったものだ。昔は私の前でも寝ていたのだがな。その度に裸にして逆さ布団巻きにして、屋上からよく逆さ吊りにしたものだ。ワッハッハー!」

 通称、芋虫の刑。

「祐奈教官のトラウマの原因は幕僚長か・・・・・・。」

 今明かされる祐奈のトラウマの日々。

「幕僚長は、祐奈教官とどこで知り合ったんですか?」

「第1回全国ジャパロボ大会だ。祐奈はその時もよく寝ていた。私はヤンキーで刑務所暮らしだったが、出たばかりのジャパロボの運転が上手くてな、司法取引に応じて自衛隊のジャパロボのパイロットとして参戦したのだ。その時に私の教官だった加藤と恋仲になり結婚したんだ。今や旦那は大日本帝国自衛隊の仕切るジャパロボ防衛大臣。そのコネで私もジャパロボ幕僚長だ。」

 華麗なる綾の人生。

「祐奈が私の後を継ぐ日も来るかもな。ワッハッハー!」

「恐ろしい日が来るんですね。アハッ!」

 移動中の車内は和気藹々としていた。

「ピーン!」

 その時、警備車両に乗る久美がレーダーが何かの反応を感知したことに気づく。

「祐奈教官、前方に12機のジャパロボの反応を確認しました。テロかもしれません!?」

「教官はやめろ! 今日は実践だ! 私のことは隊長と呼べ! でないと私が綾教官に怒られてしまう!?」

 あくまでも綾さんが怖い祐奈。

「どうしますか? 祐奈隊長。先行して叩きますか?」

「その必要はない。私がやる。だって綾教官の車両に振動が伝わったら、私が殺されかねない!?」

「いったい綾幕僚長は祐奈隊長に何をしたんだ!?」

 優子に戦慄が走る。

「エンペラー・システム・アウェイク。」

 祐奈の覚醒が始まる。

「き、消えました!? アンノウン12機のエネルギー反応が消えました!?」

「いったい何をやったんだ!? 祐奈隊長は!?」

 未知なる祐奈の力に衝撃を受ける久美と優子。

「zzz。」

 そして力を使い疲れた祐奈は自動操縦に切り替えて眠りにつくのだった。

 つづく。


「ようこそ、都庁へ。」

「これはこれは。東京都知事自らお出迎えとは。さぞ、ジャパロボ強奪事件の責任問題で焦っているのですね。」

 綾幕僚長がやって来たのは都庁であった。大江東京都知事が玄関まで出迎えるという異例の歓迎ぶりであった。

「綾幕僚長、マスコミがきていますので、まずは握手と笑顔で撮影会をお願い足します。」

「そうだな。国と東京都が仲が良いとアピールしないといけないからな。」

 無限のフラッシュがたかれる写真撮影の中で大江都知事の笑顔はぎこちなかった。

「幕僚長以外の方は外でお待ちください。」

「そんな!? 敵の本拠地に綾幕僚長を一人で行かせるなんて!?」

「大丈夫だ。麻衣。待っていろ。」

「しかし!?」

「祐奈なら私一人を生かして都庁を破壊することができる。私はそれぐらい祐奈をしんじているんだよ。」

 こうして綾幕僚長は一人で都庁に入っていく。


「申し訳ありません! 申し訳ありません! どうかお許しください!」

 大江都知事は膝をついて泣きながら土下座する。

「おまえの代わりに東京都知事に天下りしたい人間はいくらでもいるんだぞ。よくもジャパロボを奪われてくれたな。」

 二人っきりになると都知事の立場は弱かった。

「助けてください!? 私はまだ東京都知事をやめたくありません!? もう少しで任期満了の多額の退職金が手に入るんです!? 私は都知事をや辞めたくない!?」

「少しは都民のことを考えないのか?」

「自分が良ければいいんです。アハッ!」

 既得権益者は私利私欲の塊でお金の亡者だった。

「それでも奪われた都庁のジャパロボ01は自衛隊機でいえば03タイプです。そこまで気にすることはありませんよ。」

「だが、市販のジャパロボよりは強いぞ。それに一番の問題は、都庁のジャパロボにはブレイン・ウェイブ。システムが搭載されていることだ。」

 脳波でジャパロボを動かすシステムである。

「でも未完成のシステムですし、大したことではありませんよ。」

「確かに。完成していれば、おたくの01改のパイロットでもジャパロボの強奪を阻止できただろうからな。それとも阻止できなかったということは・・・・・・パイロットは強化人間か!?」

「ギクッ!?」

「うちの祐奈みたいに強い気持ちを持つ者ではないのだな!? なんと愚かなことを!? 生身の人間の遺伝子を操作するなどと!?」

 外で祐奈と睨みあって待機している麻理子は強化人間だった。

「zzz。」

 そして祐奈はコクピットで昼寝中であった。

 つづく。


「出世街道を突き進んでいるあなたには弱者である私の気持ちは分からないでしょうね。こっちは何か結果を、何か実績を残さないと、直ぐに干されてしまうんですから。だから私は都民ファーストで都民の生活の向上に努めてきた。そして都民から集めた支持率の高さでジャパロボの開発機関や、ジャパロボ・パイロット脳波研究所の設立を強引に進めて、自衛隊に対抗するべくジャパロボの機関を作ったのだ。全て私の実績だ! 私が作ったのだ! ワッハッハー!」

 大江都知事の自己の実績に対する執着は都民を操った結果で得たものであった。

「それでジャパロボを奪われた実績も追加しちゃったのね。」

「すいません!? すいません!? お許しください!? 幕僚長様!?」

 権力にしがみつく者は、自分より権力が強い者には敵わない。

「気持ちは分からなくはないわよ。私、元ヤンキーだもの。」

「では!? お許しいただけるのですか!?」

「良かったわね。2021東京ジャパロボ・オリンピックがあって。今、東京都知事をあなたから変える訳には行かないのよ。命拾いしたわね。」

「やったー!」

 喜ぶ大江都知事。

「でも東京都のジャパロボ開発機関とパイロット研究所は自衛隊の参加に入ってもらいます。私はそれを言いに来たのよね。」

「そ、そんな!? 私の実績が!?」

「二度と不祥事が起きないように大日本帝国の自衛隊が介入します。」

「それだけは!? それだけはご勘弁を!?」

「抵抗するなら、この場で死んでもらいます。どうする?」

「・・・・・・分かりました。」

「それでよろしい。」

 東京都はジャパロボの独自機関を全て失った。

(絶対に、絶対に・・・・・・この屈辱は忘れんぞ!)

 復讐心が芽生える大江都知事。


「う、動けない!? なんという自衛隊のエースパイロットの威圧感だ!?」

 都庁会談の護衛をしている麻理子は祐奈のジャパロボから放たれるオーラに手に汗をかいていた。

「帰るわよ。祐奈。」

 そこに会談を終えた綾幕僚長が現れる。

「・・・・・・もう食べれません・・・・・・もう一杯だけですよ・・・・・・あはははは・・・・・・zzz。」

 しかし祐奈は護衛をサボって寝ていた。

「ね、寝てたのか!?」

 麻理子は祐奈を買いかぶっていた。

「祐奈、起きないと顔面洗濯ばさみ100個の刑を行うぞ。いいのか?」

「ピキーン! おはようございます! 書類の整理! 洗濯物干し! 何でもやらせてもらいます!」

 トラウマ的に綾の声に祐奈の目覚めは素早かった。

「なんという感知能力!? そして瞬時に状況を把握する力!? これがエースの実力か!?」

 麻理子は祐奈に憧れるのであった。

 つづく。


「うわあ!? お母さん!? 顔が真っ赤!?」

 祐奈は勤務を終えて、たぶん無事に愛する娘たちの待つ自宅に帰還した。

「護衛中に昼寝してたらから、綾教官に顔面洗濯ばさみ50個の刑を食らわされたんだ。痛くて眠れない。」

「良かったわね。半分にしてもらえて。」

「良くない!? こんなに腫れあがった顔じゃお嫁の行きようがないよ!?」

「え!? お母さんお嫁に行く気があったの!?」

「これでも女ですから。」

 恥ずかしそうにモジモジしている祐奈。

「子持ちのシングルマザーの再婚は難しいよ。」

「私は初婚だ!」

「この作品、競馬の騎手とジャパロボ乗りは小さい方がいいが鉄則だから、なかなか男性キャラクターは出てこないから、結婚は諦めたら?」

「その時はイリスとさとみと結婚する!」

「パス。近親相姦はないわ。」

「私もお母さんは無理。同じ同性婚ならすずちゃんを選ぶよ。」

「ええー!? そんな!? あんたたち、それでも私の娘なの!?」

「ワッハッハー!」

 広瀬家は笑いに包まれて幸せそうだった。

「みなさん、ご飯の支度ができましたよ。今日のおかずは祐奈さんが関与していないハンバーグですよ。」

 そこにAIロボットの令和ちゃんがやって来る。

「ワンワン!」

「安全ね。」

「こらー!? どういう意味だ!?」

「ワッハッハー!」

 イリスとさとみは食卓に駆けていく。

「いいですね。」

「え?」

「祐奈さんは二人の娘さんに愛されてますね。」

「そ、そうかな。」

 褒められて少し照れる祐奈。

「イリスちゃんもさとみちゃんも真っ直ぐに育っています。これ以上の幸せはありませんね。」

「zzz。」

「あら? 祐奈さんお疲れなんですね。起こさずに眠らしてあげましょう。」

 令和ちゃんはそっと毛布をかけて祐奈を寝かせるのであった。


「化け物だ!? さすがにあんなのと戦って勝てる気がしない!?」

 反大日本帝国同盟ジャパカイダの本部。

「ジャパロボ幕僚長の暗殺を考え、次回のためにダミーのジャパロボを12機忍ばせていたのだが、一瞬で消滅させられた!?」

「あれが自衛隊のエースパイロットの実力か!?」

 祐奈の実力に反大日本帝国同盟ジャパカイダの本部は震えていた。

「だが、突破口がない訳ではない。」

「みなみ様、何か方法があるのですか?」

「広瀬祐奈には、二人の娘がいる。娘を人質に取れば動きを封じることができるだろう。」

「そんな卑怯な!?」

「私たちはテロリストだ! 卑怯もヘチマもない!」

 遂に反大日本帝国同盟ジャパカイダの魔の手がさとみたちに向かう。

 つづく。


「ここがお母さんの職場か!?」

 市ヶ谷の大日本帝国防衛省で全国ジャパロボ大会東京代表者激励会が行われようとしていた。イリス、さとみ、すずの三人は仲良くやって来た。令和ちゃんは祐奈に人手が足らないからと激励会のスタッフとして連れていかれた。

「あ、叔母さんだ! 叔母さん! 綾叔母さん!」

「おお! さとみちゃんか、久しぶりだな。」

 綾幕僚長はさとみのオムツを変えたこともあるらしい。

「zzz。」

「は、は、は。さすが祐奈の遺伝子を持つだけのことはある。」

 さとみはどこででも、誰が相手でも眠れる。

「こらー! さとみ! 起きなさい! 失礼でしょ!」

「はあ!? 寝ちゃった!? 失礼しました! 綾叔母さん!」

「気にするな。祐奈の呪いみたいなものだからな。堅苦しいのは式典だけだ。後はパーティだけだから好きなだけ食べて帰るがいい。」

「ありがとうございます。」

 綾幕僚長は去って行った。

「カッコイイ! 綾叔母さん! ザ、自衛官って感じ!」

「よくお母さんはクビにならないで働けてるわね?」

「まあ、まあ、二人とも!? 落ち着いて!? このジャパロボ自衛隊カレー美味しいよ!?」

「本当だ。美味しい。でもどこかで食べたことがあるような味なような?」

 フォローするすずも大変である。

「おまえたちは、ここに遊びに来たのか?」

「その声は!? 優子!?」

 そこに竹内優子が現れる。彼女の正体を自衛官とはさとみたちは知らない。

「どうしてあなたがここに!?」

「忘れたのか? 私も東京都代表の一人だということを。」

「え? そうだっけ?」

「zzz。」

「寝ないで!? イリスちゃん!?」

 自由奔放なさとみたち。

「なんで、こいつらが憧れの祐奈教官の娘たちなんだ!?」

「なんか言った?」

「別に。何でもない。」

 優子には不思議でならない。

「優子! 今年こそは私が優勝するからな!」

「何を!? 私の2連覇は確実だ!」

 火花を散らす戦う女子高生イリスと優子。

「あの!? 私、小池麻理子です。皆さんと同じく全国ジャパロボ大会の東京都代表です!? よろしくお願いします!?」

 そこに現れた麻理子は意外に人見知りだった。

「よろしく麻理子ちゃん。アハッ! あたし、さとみだよ。」

「ありがとう。さとみちゃん。」

「私はすず。」

「こっちがイリスお姉ちゃん。」

「お姉ちゃんをこっちって呼ぶな。」

「アハッ!」

「ワッハッハー!」

 さとみたちは麻理子と仲良くなった。

「なんでこう、ジャパロボ乗りは普段とジャパロボに乗っている時と性格が180度違うんだ?」

 優子は麻理子の弱弱しいあがり症な性格と、飛ぶ斬撃を放つジャパロボのパイロット時とのギャップに呆れる。

 つづく。


「戦いを繰り返しても、犠牲者や新しい復讐心を生むだけだとなぜ分からないのですか!? 戦いからは何も生まれない!」

 激励会は順調に進んでいるかに見えた。加藤ジャパロボ防衛大臣と綾ジャパロボ幕僚長の夫婦スピーチが終わり、東京都代表の5人が紹介され、記者からの質疑応答が始まった時に事件が起こった。

「どこの記者だ?」

「大日本帝国新聞だってよ。」

 ざわつく会場。

「zzz。」

 寝るさとみとイリス。

「毎回、毎回、全国ジャパロボ大会はテロリストが現れるんですよ! そんな危険な大会を、まだ続ける気ですか!? 女子高生はあなたたちのおもちゃじゃないんですよ!」

 大日本帝国新聞の記者に変装した反大日本帝国同盟ジャパカイダのリーダー南である。入り口の検問も大日本帝国新聞といえばフリーパスであった。

「戦争のためのデータを取るためだけに、若者の命を犠牲にしていいのか!」

 みなみの演説は多くの人々に疑問を投げかけた。

「なら、あなたはどうしたいのですか?」

「全ての人々が平和に暮らせるように、大日本帝国の解体! 武力を放棄すべきだ!」

 みなみは戦争のない世界を作ることを目的としている。自分が姉を失って知った悲しみを誰にも味合ってほしくないのだ。

「いいでしょう。もし武力放棄をしたとして、テロが起こったらどうします? 誰が人々を守るんですか?」

「平和になったらテロが起こるとは限らない!」

 一歩も譲らない南の態度に会場の雰囲気は重くなっていった。

「うっ!? 苦しい!?」

 その時だった。会場の全員が突如、苦しみ始めた。

「助けて!?」

「毒ガスか!?」

「何が起こったんだ!?」

 例外はない。加藤夫婦や自衛官、記者、一般人など、多くの人々が突如地面に倒れ始めた。

「おかしい!? 私たちは何もしていないのに!? だが、この隙に逃げらしてもらうぞ。」

 みなみは混沌としている防衛相から姿を消した。

「こ、これは飯テロだ!?」

「飯テロ!?」

 厨房に急ぐさとみたち。

「やっぱり。犯人はお母さんだ!」

「ゲッ!?」

 さとみたちが厨房で見たものは料理をする祐奈であった。

「おお! よくぞ来た! 我が娘たちよ! 良かったら食べてくれ! お母さん特製のカレーライスだ! ハヤシライスもあるでよ! アハッ!」

「飯テロの現行犯でお母さんを緊急逮捕します!」

「え!? なんで!?」

 こうして祐奈は連行されていった。

「令和ちゃん、お母さんに料理させたらダメでしょ。みんな死んじゃうよ。」

「おやすみなさい。zzz。」

「ああ!? 寝て誤魔化した!?」

 AIロボットも寝て誤魔化す時代がやって来た。

 つづく。

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