第19話


「おつかれさま~」

「おつかれ~」

「お疲れ様でーす」

「オツ……です」


 フラワーガーデンのギルドホームに社員たちが帰って来る。

 みんなそれぞれの冒険を終えてきたところだ。

 今から終業のミーティングである。


「それじゃあみんな揃ったし始めよう。」

 クーガの肩に乗ったソラが、全社員がギルドホームの大きなテーブルについているのを確認してそう言った。

「本日。特別な発見をした人いますか。」

「はい。」

「おっ、珍しく飛鳥からか。何があった?」

「実は今日はマラソンをしてたんですが」


 マラソンとはギルド協会で配布されるフリークエストを受けて、クリアして、また受けに行って、を繰り替えすプレイのことだ。


「てか飛鳥くんまたソロだったんだ」

「だからゲーム内ではASUKAと呼んでくれと――――」

 フルダイブ型のゲームで綴りについてを言ってもしょうがないと思うが、飛鳥はこだわる。

「6週くらいしたところかな、仲良くなった協会のNPCから」

「ふ~~~~~ん、仲良くなった協会のNPCねぇ~~~~~。いったいどの子かなぁ~~~~」

 飛鳥のセリフにQべぇが不穏な空気を醸し出すが、飛鳥はそれに気づかずにあっけらかんと答える。

「モニカって内巻きの娘。あの子曰くなんだけど――――」

「ふ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん。」


「クーガさん。Qべぇさんが怖いんですけど」

 クーガにノエルが耳打ちしてくるけど。

「いつものことだよ」

 と、すげなく返す。

「飛鳥さんってバカなんですね」

 お前には言われたくないだろうな。そう思うクーガだった。


「それで、モニカ曰く、年末年始に祭りがあるらしいんだ」

「へぇ、お祭りですか」

 いつもはミーティングに参加しないブロッサムだったが、今日は全員集合と言われていたので、他の社員と冒険していたのである。

 そのブロッサムが興味をひかれている。

「何でも、日本の年越しと正月をテーマにするらしいぜ」

 FCOは全世界共通サーバーで運営されているらしいので国ごとにイベントの趣旨や企画が違う、なんてことが無い。

 そして意外にもマイナーなイベントが開催されていたりすることもあったりとバラエティーに富んでいる。


「今回も外じゃなく、中での告知か」

 ただ、それらの告知はリアルでは行われずにFCO内だけで行われる。

 そして、FCOは時間加速があるのでリアルに戻って情報提供してたら出遅れてしまうので、基本外では知りづらい。

「今回は事前に告知を受けれましたから、フラワーガーデンの広報担当のミーアの番組で告知してくださいよ」

「任せなさい。ふふふ、これで視聴率はいただきよ」

「他に報告あるヒト」

「それと」

 飛鳥が追加で手を上げる。

「インフォメーションにあったアプデも祭りの直後ぽいですよ」

「OK。他に報告はない。なかったら私から」

 そう言ってソラがクーガの肩の上で立ち上がる。


「まず、ノエルが2章まで進んだわ。これでそこそこ戦えるようになったから皆で育ててやって」

 その言葉に皆から拍手が上がった。

 実際、ノエルの運は高くて、最初の盗賊たちから追いはぎすれば性能の良いアイテムをドロップするわするわ。それらを換金してたらお金もすぐ溜まって結構いい武器を買ったのだ。

 おまけにノエルは回避が上手い。

 FCOではキャラのステータスに防御力が無いので装備の性能とプレイヤースキルに頼ることになる。

 だから動きのいいノエルは良いプレイヤーに育つだろう。

 ……ちょっとポンコツだが。


 そんなことを説明した後、ソラからさらなる重大発表があった。

「そして、30日から3日までわが社は連休とします。」

 さらに拍手の勢いが増した。

「マジですか。」

「ミーアのおかげで余裕ができたのよ。ただし、各自で何らかの成果は出すように。」


「「「ですよね~~~~。」」」

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