第20話:プリシラとリム、次の進路は?

 プリシラは小さい時のように優しくしてくれるリムに驚き、嬉しくて、続けて甘える妹のように、また涙しながら、訴えるように話した。

「でもね、“プリシラは殺人者”とまで言う人もいるのよ!あたし、マイムお姉ちゃんを殺す気なんか絶対にないのに!」


「当たり前だ。そういう風に言うなんて酷いなあ!言わせとけよ。ロック兄さんやロックパパやママは優しくしてくれるんだから。シーラの心臓のこともあるけど、俺はマイム姉さんのこともあって外科医になろうと思うって言ったっけ?」

「それは聞いてないわ。リムお兄ちゃんならなれそうね」

「うーん、難しそうだけどな」


 プリシラの心臓のこととは、プリシラが3才頃、心臓病が見つかり、手術をして、ほぼ完治し、投薬だけですんでいることだ。


  さて、プリシラは懇願するようにリムに聞いた。

「どこの大学の医学部行くの?ねえ、こっちに戻って来ない?

リムお兄ちゃんならブレジア大学なんて楽勝でしょ?」

「ブレジア大学もいいんだけど、やっぱりバレジア大学を受けるよ。こっちは滑り止めで受ける」

「そっかあ。やっぱりリムお兄ちゃんなら、バレジア大医学部じゃなきゃね。また6年も離れるのは寂しいけど、私もそれじゃナース目指そうかな」


 プリシラは真面目に言ったつもりだが、随分、軽く言ったようにリムには聞こえたので、

「お、お前はナースなんて止めとけって!バレジア大は絶対に無理だし、ブレジア大も無理、家政が一番合ってるって。細胞分裂に興味がないなら医学部は無理だよ」と焦って全面的に否定した。


 

 しかしプリシラは、そう言われてすぐ諦めたり落ち込んだりしない性質たちなので、背を倒して言った。

「うーん、リムお兄ちゃんと同じような道進みたいわー。家政科行って、ブレジア看専も行くってのは?」


「看専なんて、准看の人や、年配の人や、留年しまくってる人が行くような所だよ。友人も出来なくて、つまらないかもよ?」

リムは意図的に少し大げさに、看専のことを否定的に言って、プリシラにナースを諦めさせようとした。


「でも、良い点数で国家試験合格して卒業する人もいるわ?」

プリシラも負けずにしつこく言う。

「そりゃ、准看の人とかならいるさ。じゃあ頑張れば、って」

リムは面倒臭くなって、好きな様にしろと、放り投げるように返事を返した。


「じゃ、リムお兄ちゃん通信添削してくれない?」

しかしプリシラは気にせず、また都合の良いことをしれっとして言う。

「バカ!そしたら学校行く意味ないし、俺に給料払ってくれない?友達もいらないの?俺も医学部入ったら忙しいよ。お前の面倒見てたら医者になれやしない」


「そうよねえ。じゃあ、あたしナースになれないかなあ」プリシラは素直にリムの考えを受け入れて返事をした。

「家政科とか調理師とか接客業や文系の方がいいよ。病気の人のためにもな」

「そうね、生きれるはずの人も死んじゃいそう」プリシラは自分で悟った。

「そうだよ、可哀想だろ」

「でも、バカバカ言わないでよ。文系だって何もかもダメになっちゃう」

「分かったよ。なるべく気を付ける」







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