第5話:プリシラの思い込み
――翌年、プリシラが校区内の中学1年生、リムが中学3年生の半ば頃。
リムは、バレジアの高校もブレジアの高校も、受験した高校は全て合格した。しかも難関高校ばかりだった。
「さっすがリムお兄ちゃんねー!」
リムの受験結果を聞いて、また気兼ねなくリムの家に来たプリシラは、感心して、リムの部屋で身を乗り出し、愛嬌よく大きな声を上げた。
「お前の勉強を見てやったりしてたのにな」リムは得意そうに皮肉ってプリシラにニヤっと笑いかけた。
「ほんとね。あたし、今頃気づいたんだけどねえ、受験勉強邪魔しちゃってごめんね」
「今頃気づいたのか、アホだなあ」リムは、素直に謝るプリシラに照れて、照れ隠しで意地悪を言った。
「まあ、僕も復習出来たし、勉強になったし、少し息抜きにもなったよ」
「そお?良かった。そいで・・・・・・」
プリシラは大好きなスカートをぐしゃぐしゃにして、まごついた。リムがどの高校に行き、バレジアに引っ越すのか聞くのが怖かった。リムもそれを伝えることを心配して、2人の間に沈黙と、気まずい雰囲気が流れた。
「プリシラ!」リムが重い雰囲気の中、重たい口をやっと開くと、プリシラは、
「あたし帰る!中2になる女子が、隣とはいえ、高1になる男子
の家に来て遊んだりするなんてね、おかしいわよね。もうやめよっかな。やめなくたって引っ越すかもしれないもんね」と、リムに話す隙を与えず早口で喋り、作り笑顔をして、リムの部屋から急いで下へ降り、リムの家族に挨拶もせず、すぐ隣の自分の家に走って戻って行った。
ケビィは
「シーラお姉ちゃん、どうしたのお?」と、不思議そうに玄関と2階に目を行き来させた。
「プリシラあ!」
さすがにリムは心配して急いで下へ降り、家から出てきて、庭から隣のプリシラの部屋へ向けて、プリシラの名を呼んだ。
しかし、プリシラの家の中まで入ることは、今は無駄に思えて、足が止まり、きびすを返して家に戻った。
その声が、自室に戻ったプリシラの耳に届いたが、プリシラは自室に籠って、まだリムが引っ越すか分からないのに、背中を丸め、膝を立てて座り、膝の上に両手を乗せて顔を埋め、肩を震わせ声を押し殺して泣いた。今はまだ、柵を隔ててすぐ隣にリムがいるのに・・・・・・。
「リムお兄ちゃんがバレジアの高校へ行ってしまったら!そいで、リムママやリムパパ、チビのケビィも、あっちの家にいなくなってしまったら!あたし、家に帰ってもあんまり楽しくなくなるし、学校で分からなかった勉強は誰に聞こう?トゥオルお兄さん?嫌!嫌よそんなの!リムお兄ちゃんがいいわ!リムお兄ちゃんしかいないのに!」
ちなみに・・・・・・トゥオルはリムがどちらへ行こうと、地元ブレジアの行きたかった高校に合格し、そこに通うことに決めていた。
4つ上の、近所で昔から面倒を見くれたり遊んでくれていた、ロックと同い年のお姉さん、リージャは、すでにロックと同じバレジアの高校に行き、ロックと共に通学していた。ロックとリージャは同じダンス部に入り、リージャは寮から通学していて、実家はブレジアにあり、両親が不動産業を営みながら住み続けていた。
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