水面に写る月

全て話し終えると先生は大きく深いため息をついた。

しばらくの間4人とも言葉を発する事を躊躇ためっていた。




静子は深く後悔していたんだ。

わかってくれるかい?



わかるも何も……。

私が誤解をまねくような事をしたのが悪いんです。だから最初から恨んでなんかいませんし、むしろ謝りたいのはわたしの方ですから……。



それからあの日の私の状況、

そして崖から落ちた経緯いきさつなどを詳しく話した。

先生は申し訳なさそうに、話している最中にも何度も謝って頭を下げた。



私……静子さんに会ってみたかったです。


そうだな。

会って話せたらまた違ったかもしれないな。



生駒先生はその後この神社にお世話になる事になったのですか?


と少し重たい話から逸らすように、

緑郎は機転を聞かせて質問した。



そうだね。

一通り静子の送る儀式をすますと、

私はその足でこの神社に向かった。

ご両親はもう他界されていたが、

妹さんがおられて快く受け入れて下さったんだ。




私は思っていたんだが……、


と少し考え込んでから先生が話を続けた。


麻倉も継ぐ者なんじゃないのかい?


何故そう思うのですか?


君はどうやってこの雨宮天満宮に辿り着いたんだい?偶然なんかじゃなくて何かきっかけがあったのではないのかな?



……そうですね。

私は先生の見た青い夢と同じ様な体験をしました。私の場合青い雨の…ではなく、

闇を照らす月光つきひかりの翁の夢……


月光の翁か……。



その翁も自分の事を月を読む者と名乗っていました。先生ももう気がついていらっしゃると思いますが、先生の出会った水を読むものも、私が出会った月光の翁も日本神話に出てくる神々ですよね?



……そうだろうね。私が出会ったのは

水の女神様 弥都波能売神みつはのめかみ。雨宮天満宮の主神様だよ。

君が見たのはおそらく……



月讀尊ツクヨミノミコト

運命、宿命、を司る月の神。

だと思います。

私の父は作家なんかをしていますが、

実はある神社の子息なんです。

私は家にあった神道の本を読んで、あの大学を選んだのですから。



君はこの神社に来るのは初めてではないだろう?


はい。

子供の時に父に連れられて来ました。

さっきまで忘れてましたけれど……。



私はあの日以来、時々青い世界に迷い込む。

その時は決まって誰かの行く末を相談された時だ。けれども私は何が正解かなんて知らない。その青い領域に入って水の流れに沿う様に促すだけだ。




この話は君たちに話すのが初めてだけどね。

その領域で私は聞かれたんだ。

私の石を知らないか?…とね。



石?……!

いったい誰に……?


あっ!!

私はあの日拾った月の雫…らしき石を皮の紐を通して首からいつもかけていた。

そして子供の時に訪れた時の記憶が少し蘇る。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


なにをさがしているの?



小さな石よ。

丸い雫型の

キレイな小さな石。



へー…。

それなに?

ほうせき?



うーん…翁様……知り合いのお爺様からいただいたの。

だけど何処かに忘れたか、

落としてしまったみたいで……。



わたしも見たいなーキレイな石。

いっしょにさがしてあげる!



女性は首を横に何回もふりながら、


もう長い事探してるの。

それはもう……



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

首元からその石を取り出してみる……。


まさかね……。
































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