ルナティック
僕は思うんだけど……。
と緑郎が考えた事を話しはじめた。
深月さんのまわりで起きている事って、
一見なんのつながりもないように思うけど、
一つ一つの点が全て線でつながっているのではないかな。
どういう事?
と優美の合いの手に、
緑郎はしばらく唸りながら
自分のノートをとりだした。
今は話を聞いていただけだから、
頭の中では一つにつながらない。
だから一度状況を書き出して、
整理してみない?
優美と目を合わせて頷く。
まず意識を失った深月さんの見た夢から
この話しが始まった。
青い雨の記憶。
それから朱い糸。
そして月讀の翁。
青い雨の記憶は
深月さんが実際に経験した闇の部分。
その闇の記憶を辿ると関連性の高いワードが
でてきた……。
神社に祀られた右手月讀宮
ここで僕が考えたキーワードは 月 だ。
今まで起きた出来事を
彼の性格をあらわすような繊細で
間違えのない几帳面で丁寧な字を
ノートに書き連ねていく。
万有引力てわかる?
うーん知識としては知ってるけど…。
ニュートンの林檎が落ちるあれよね……。
うん〜……。
曖昧な答えにとりあえず頷く緑郎。
まぁ簡単に言うと、
万有引力の法則ていうのは、
ニュートン の発見した、
すべてのものが互いに引き合う力「引力」を持っているという法則の事なんたけど……。
わかる?
わかるようなわからないような……。
そういえば緑郎は大学で物理を専攻してたらしい。
ちょっと難しいか…まぁいいや。
実は引力と月の満ち欠けは強く関係しているんだ。
月は約29.5日の周期で少しずつ姿を変えている。
三日月とか、半月とか聞いた事あるでしょ。
その月の形状の中で
より地球と月の引力関係が強い日がある。
それが満月と新月。
実はこの満月と新月の時は太陽と地球と月が一直線状にならんでいる時なんだ。
この3つがお互いに重力で引き合う現象の時、精神になんらかのの異常をきすといわれてる。その状態をルナティックっていうんだ。
人間だけじゃない。
木々は満月になると養分が引力で枝葉に運ばれ、新月になると逆にその作用が薄くなり、満月の木には白蟻がつきやすく、新月の木には白蟻がつきにくい。
それから穀類、果実は昇り月の収穫が美味しく、根菜類は下り月が味が良いと書いてある本もある。
だから豊作の神宇迦之御魂神を祀る神社に
月の神が祀られているのは納得がいく。
そういえば……。
緑郎の話を聞いて急に思い出した。
雷神様も豊作に関係しているわ。
雷神さまが?
雷って稲妻て言うでしょ。
稲妻の語源は「稲の夫(つま)」だそうで、それは雷光が稲を妊娠させると考えられていたかららしい。 昔、雷が多いと豊作になることが多いため「雷光が稲に当たると稲が妊娠して子を宿す」と考えられたって神話を読んだ事があるわ。
なんかすごいね。
と優美が目を丸くして感心している。
全ての出来事につながり意味があるように思えてきた。
うん。
話を戻して悪いけど…、
深月さんが崖から落ちた日は確か満月だったんでしょう?
僕は物理的な観点からしか
ものを言えないけど、
その日は先生も
奥様にも、
それから深月さんも
ルナティックハイ……
満月の影響をうけて
なんらかの異常を期してたんじゃないかな?
ドクン……。
兆し……?
緑郎が話し終わるか終わらないかのうちに、
唐突に目眩がしてきた。
頭の中に脈動の音がドクンドクンと次第に間隔を狭めて流れこんくる。
生命の鼓動…
朱い流星…
朱い糸が繋がる……。
?!
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