ひとりしずか

ひどい頭痛で目が覚めた。


ここはどこだろう?


白い無機質な天井が

やたらと眩しく見えた。


ドクン


何かと繋がるように

心臓がなった。


白いカーテンで仕切られたベッド。

落下防止の柵

手首に繋がれた透明な管

だんだんと意識がはっきりして

ピッ ピッ ピッ

という機械音が聞こえてくる。

窓から見える高い空。

エアコンがほどほどに効いて

快適な部屋だ。


病院?


あっ目醒めました?


と別にいつもの光景を見てるかのように、

看護師が声をかけてきた。


わたし…。


脱水ですね。

熱中症。

ちゃんと水分とってますか?

こういう時代だから、

エアコンちゃんといれないとね。

先生呼んできますねー!


エアコンは無いし、

そういえば昼に会社で、

浄水器の水を飲んだきりで、

その後とった水分は

酎ハイだけだ。


などと冷静に思い返しながら、

自分が倒れて

病院に運ばれたのだと気が付き

青ざめる。

でもどうやって?

救急車?


若い男性が救急車よんでくれたんですよ!

熱中症もほっておいたら死にいたりますか

らね。


誰か迎えに来れる方連絡つきますか?


えっ・・・。


離婚してから

親とも疎遠。

結婚を気に地元から引っ越ししたので

もとからこの土地に友人などいないし、

会社なんかに知らせなくないし、

あっ!!

今日は休みだった。

良かった。

じゃなくて…。


かばんが横のTV台の上に

おいてあった。

手を伸ばしてスマホを取り出す。

わかっているけど、

連絡先を上から

人差し指で、

さしていく。


はー。


ため息しかでない。実家に 会社に 病院

馴染みの美容室

元バイト先

あとは地元の友達何人か


離婚した事を言い出しにくくて、

地元の友達とも連絡をとっていなかった。


それに地元は簡単に来れる距離じゃない。


結局私が今この土地で頼れるのは…。


もしもし。


…優美…。

どうした?


いや私…。

ちょっと倒れて病院に運ばれてしまって…



え?!

今何処?



駅前の市民病院だと思う。


…。



沈黙かー。

そりゃそうだよね。

また迷惑かけてる。


あ!迎えに来てもらおうとおもったけど、

やっぱりいいや。

ごめんなさい。

なんとか一人で帰れるし、

む、無理そうなら

会社の仲のいい同僚に頼むわ。

ごめんごめん。

じやーきるねー!


怒られるに決まってる。

また迷惑かけてる。

だから彼が口を開く前に通話をきった。

そしてそのまま電源もきった。


でも言葉とは裏腹に

涙腺のスイッチは入りっぱなし。

一人になりたい。

でも一人はさみしい。

私には誰もいない。

私はひとりぼっちだ。


たまらず病室を飛び出す。

点滴がはずれるが関係ない。

涙で前が見えない



うわー!!


人とぶつかる。


あー良かった。

目覚めたんですね!


赤い自転車の人だった。

















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