赤い自転車

点と点を繋ぐ線。

暗い闇の中を走るその線は

あかく流動的なのに、

繊細で美しく

生命の脈動のようだ。

不規則に絡みあいながら

やがて辿り着くべく星に意識がむく。

そして行き着く先に繋がる。



さっきも言っただろう?

 先日もお伝えしたと思いますが?

なんでわからないかなー?

自分頭わるいのか?

今までどうやって生きてきたの?


ネガティブな言葉は頭のなかを

ループし続ける。

それを笑い飛ばせるほど自分に自信などない。


吐き出す方に悪意はない。

だから言った言葉なんて

風船の様に軽い。


吐かれた方は傷つく。

でも悔しいから次は同じ事をしないように

最新の注意をはらう。

いや払っているつもりなのに、

また同じ類の事がおきる。

そうすると言われてもいないのに、

同じ言葉が頭が巡るのだ。



駅まで自転車で10分。

汗をかくには充分な距離だ。

スーツのポケットから

ハンカチを取り出し汗を拭った。


駐輪場の定位置にとめて、

隣に赤い自転車がとめてあるのを見て

一息つく。


この駐輪場は月毎に更新する為、

毎月置く場所が違う。


月が変わる毎に、

隣の自転車を見ながらどんな人が乗っているのかを想像しながら仕事にむかう 。

それが優美(ゆみ)の楽しみだった。


折りたたみ式であろう型の自転車。

赤というよりも

紫がかった赤で

ハンドルには変速のダイヤルがついている。


アクティブな感じで

グレーのスーツが似合う女性

髪は長めだが仕事しづらいから

後ろで黒くてシックなのに、

可愛らしい髪留めで

くくっている。

自転車にのるのだもん。

もちろんスカートじゃなくて、

パンツスーツだ。


そんな想像をしながら、

駅のエスカレーターを登り切ると、


 あ、自転車の鍵が無い。


いつもこれだ。

慌ててエスカレーターを降りようとして、

振り返る。


あー!!


当然エスカレーターは止まらず上がってくるので後ろに倒れこむ。


大丈夫?!


と後ろにいた若い男性に

受け止められた。


安心と共に

冷や汗と、

急に込み上げる恥ずかしさ…。

慌てて後退りして


す、すいません。


彼は笑顔で


大丈夫ですよ。


と言ってその場を立ち去っていった。

チャコールグレーのスーツ手に

水色いシャツ

紺色と白の綺麗なストライプのネクタイ

シルバーの高そーな腕時計。

できる男と感じ。

あんな男性に守ってもらえたら!!

という妄想が膨らんでいった。


その日から私は

駅に着くと

彼を探す様になった。





















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