嘘つきの治し方

動き出した電車は

混乱を制御する人々で溢れていた。

会社や取引先に謝罪の電話をする人。

それを見て

電車で電話するなよー。

とか思う人。

ただひたすらスマホを眺めている人。


とか思いながら上司にLINEする。

遅れる旨を

伝えながらちょっとした言い訳をする。

別に自分が悪い訳じゃないのに。

少し盛り気味で…。


嘘つきの治し方


結論から言えばそんな物はないでしょう。


嘘はつけば吐くほど

上塗りが必要になる。

一度ついた嘘はカミングアウトするまで

悪い腫瘍のようにコビリツクのだ。


嘘をつく方も平気ではないのだ。

いつバレるか。

とかだけではなく

言わない事に

隠している事に

心を痛めているのだ。


嘘にもいろいろな種類がある。


失敗を隠す為の嘘。

隠し事を隠す為の嘘。

知らない方が良いと思う嘘。

それから誰にも知られたくないから

自分の中に押し込まれた嘘。


最後の奴を持っているのは、

とてもつらい。

何故ならば、

自分の過去は変えられないからだ。

思い出したくないから

何もなかったようなフリをする。

親にも言えず、

友人にも言えず、

ましてや

恋人や伴侶になど言えるわけがない。

何故?


それは大事なものを失いたくないから。


信頼はしてるよ。


でもその信用以上の事は

誰にも言えない。


自分の気持ちを抑えて生きていく。

そんな事をしているうちに、

自分がどういう人間かわからなくなる。


じゃー人生さえ嘘なのか。

私は本当は何がしたくて、

どんな人生を送りたいのだろうか?


アサーティブ

という言葉がある。

いわゆる自己主張というやつだ。


この自己主張って奴は

自尊心のない人には難儀な物だ。


だって自分を主張しようにも

自分の事を信じられないんだから。


嘘つきの治し方は

自分に嘘をつかない事だよきっと。


そんな事を思いながら自転車にまたがった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る