僕の世界に『 』はいらない。

黒い猫

episode1.勘違

第1話


 あれは20X0年の……確か、六月の事だ。その日の夜。俺はいつものようにテレビをつけて見ていた。


「…………」


 ニュースでは、どうやらその日の午前中にここから近いところにある中高一貫の学校で、理科室まるごと吹っ飛んだという『大事故』が起きたらしい。


「うわぁ、すごいな。コレは」


 パッと画面が切り替わり、事件現場の映像が流れると、自分でも意図せずにそんな声がこぼしていた。


 それくらい、今映った『教室だったとおぼしき場所』は、元の原型を留めていない無残なモノだった。


 しかし、この爆発により吹き飛んだのは現場となった理科室のみで、同じ階にあった他の教室やその周辺の教室は窓ガラスが割れたりヒビが入ったくらいで済んだらしい。


「…………」


 ただ、俺はこの映し出された理科室の惨状から「発生した爆発の規模は下手をすれば後二つか三つの教室が吹き飛んでいてもおかしくない。むしろ、この程度で済んだだけでも奇跡だ」と感じた。


 ニュースによると、この学校には『副教科』と呼ばれる音楽、家庭科、書道や美術などの教室は一つの棟としてまとめられており、理科室もその言わば『副教科棟』とも言えるこの中に含まれていた。


 そして、事件が起きた当時。偶然にも理科室以外は使われていない状態だった様だ。


 そこに関しては、まさに『不幸中の幸い』というヤツだとは思うが、それでも「爆発が発生した時はものすごい音がしたらしく、その巨大な爆発音を聞いた何人かの生徒の中には過呼吸などの影響があり、病院に運ばれた」とそのニュースでは言っていた。


『爆発が発生した当時、あるクラスが実験をするためにこの理科室を使用していたもようです』


 ただ、その実験に参加していたクラスの生徒に生存者は誰もおらず、実験の担当をしていた教師も亡くなったらしい。


 そして、その実験を担当していた教師はそのクラスの担任だったらしく、規模が規模だけに『事件』と『事故』の両面から調べられた結果。


 実はその担任の悪い癖で、本来の実験とは関係のない実験をする。という事がよくあったらしい。


『ただ『お遊びで』で簡単な『マジック』にも近いモノではなく、その中には生徒の目の前で爆発させる……という過激なモノもあったらしく』


「今回はその『実験』が運悪く失敗した結果ではないかって事か」


 そして『担任の不注意による事故』という形で、この一件はあっという間に終わりを迎えた。


「なんだ。すでに解決していたのか……」


 思いのほかあっさりと終わった事件の結末に、俺ははいつもの様にテレビのリモコンのスイッチを切り、机の上にリモコンを置いた。


「……はぁ、眠い」


 そして、いつもであれば、ベッドに移動するのだが、その日に限って、そのまま床で眠ってしまったのだった――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る