第12話

 リハビリも。佳境を迎えた。そろそろ、現場復帰も視野に入ってくる。ようやく、殺し屋として復帰できる。


 彼は。


 まだ来てない。


 最近は。


 彼に会うのが、いつも、楽しみになっていた。あの顔を。そして。その心を。眺めていたい。寄り添っていたい。綺麗な顔と、その顔をいやがっている心。大事にしてあげたい。


 顔について訊いてしまってから。会話でその事を出さないように、最大限配慮した。でも、彼にはうそが通じないから。ときどき、彼は。自分から顔の話をする。そして、まとわりついてくる女性の話をして。ひとりでへこむ。


 へこんでいる彼は、わたしのことを気にしないらしくて。いつもうなだれて足元を見て、へこむ。わたしは、それを見ると、抱きしめてあげたくなる気持ちになる。


 でも。女性につきまとわれたりしてつらくなっている彼に、抱きつくことは。できない。


 自分が女性として見られていないからこそ、わたしに話してくれているのだろうと、思う。だから。わたしは。これより先へは。進めない。


 彼が来た。


 いつも通り。にこっと笑って。


「今日もですか?」


「ええ。精神科の医者に、別れを言おうと思って」

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