バレットインラヴ、パレットオンラヴ (15分間でカクヨムバトル)

春嵐

01

 ある日。


 絵が描けなくなった。


 もともと、たいした方法で描いてきたわけではない。なんとなくの気分で描いて。なんとなく飾っていたら、それを見た人が買っていった。そういう、それだけのことで。他にやりたいこともなかったので、画家をやっていた。


 描けなくなったら。自分に価値がなくなったような、そんな気がした。


 コンビニのレジ前とかにある、売れ残った商品。半額のやつ。自分に似ているような気がして、つい買ってしまった。わさび食えないのに。わさび味のポテトチップス。


 仕方ないので、持ったまま病院に向かう。


 おかねの心配はなかった。絵はなぜかその手の方々に売れ、人生4回分ぐらいのおかねはある。ただ、使い道がない。金の使い方を知らないことが最も不幸だと、実業家の誰かが言ってたっけか。これも、不幸のうちに入るのだろうか。


 街中。駅前。


 新幹線とかの止まる駅の後ろのほうに、病院がある。大きめのやつ。だいたいは、ここ。


 マネージャからは、海沿いの村にある病院を勧められていた。そちらのほうが、規模も施設内容も良いらしい。三日月村と言ったか。灯籠流しのあるところだとは知っているが、それ以上は知らない。病院があることも、はじめて知った。


 精神科。


 いつも通り医者と話して。


 頭を抱えられて、終わる。


 いまの自分は。正常、らしい。

 というよりも。これまでの、絵を描いていた自分のほうが異状、という診断結果だった。何かの精神的な異常があって、それが快癒したために絵が描けなくなった。そういった類いのことを言って、そして、また頭を抱えられる。正直、どうしていいか分からない。

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