硬茹で
teardrop.
第1話 ハンプティダンプティも硬茹でならば死ななかったろうに
「てめぇのイチモツちょん切って、ケツの穴に詰めてやろうか!ああん?!」
現状は最悪だ。仕事の合間に立ち寄ったバーで女を口説いたらすんなり墜ちたものだから一晩を共にしたんだが、どうもその女はここらのボスのものだったらしい。それがバレて今、銃を突きつけられている。トンプソンM1A1。古き良きギャング御用達のサブマシンガンである。トミーガンという名前はあまりにも有名だ。
こちらは裸で丸腰である。隣の女はシーツに包まって身体を隠していた。
「はぁーっ」
ついていない。ため息を付きながらそろそろと後ずさりながら隙きを伺う。
「おいおい、ため息なんてついて余裕ぶっておきながら逃げ腰か?ビビってんのかよ!」
品のない笑い声が安宿の一室に響き渡る。仲間のデブも腹を抱えて笑い始めた瞬間、枕の下に手を突っ込み相棒を引きずり出す。コルト・パイソンハンター・カスタム。右斜め後ろに飛び退き下に落ち、ベッドを盾に発砲。7.5インチの銃身から3発のホローポイント弾がならず者めがけて飛んでいく。身体を隠し目から上、そして腕だけを出した変則的なファニングショット。腕が痛い。
「ぐぁあああ!」
「くそっ!」
ハートショット2。一人だけ肩に外してしまった。心臓を狙っていたので左肩である。つまり銃はまだ撃てるということだ。ズダダダダと頭の上を銃弾が掠めていく。
「キャーッ!」
女の悲鳴が木霊する。伏せてろ!と叫び返し考える。敵の武装はトミーガン。弾倉は箱型であった。つまり2,30発で即座に弾切れである。
すぐさま顔を出して撃とうとすると、死体の持っていた銃を構えていた。
「ふざっ!」
ふざけんなと言う隙もなく頭を引っ込めた。またしても頭上を弾丸の嵐が襲う。敵のSMGは3丁。だが座り込んだあの大勢でもう一人の武器を回収など出来まい。サイドアームが存在する可能性もあるが…それを引っ張り出させる前に、殺す。
ベッドの影から飛び出すと頭に一発撃ち込んだ。
「頭蓋骨をチタンにしておくんだったな」
死体のポケットをまさぐり鍵と財布を入手すると、荷物をまとめて外へ出た。女はさっさと逃げ出していた。
案の定止まっていた3台のバイクのうち、状態の良さそうな1台を選び鍵を差す。
「これじゃねえな」
鍵穴に合わなかったので放り捨て、別の鍵を指す。ぐるんと回せばバタバタとエンジンが回りだす。アクセルを握りスタンドを蹴飛ばし走り出す。まったくとんだ朝だ。
あとがき
史上最低なセリフから始まったなァ。銃は特に詳しくないですが、こういうの書きたかったので。
あ、タイトルに特に意味はない。
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