憶 B面
どっかで見たことあるな。
高校の帰り道、本数の少ない地元線に乗ってる時に、斜め前に座ってるお兄さんを見た第一印象がそれだった。
今の時代には珍しい着物で、膝には布で包まれた荷物を持っていた。ああいう下駄って足が痛くなりそうであたしは無理だなって思う。
適当なとこに座ってとりあえずスマホを見ていたら、その男の人はあたしがスマホいじってるからバレてないと思ってるのか、こっちをまじまじと見てきた。そっちがその気なら、あたしだって観察してやろう。そんな気持ちが湧いてきて、下を向きながら目だけで男の人を見た。
男の人にしては長めの髪の毛に、どちらかと言うと美人系の顔で、細っこくて、小柄で、下手すれば同い年くらいに見える大学生くらいの人。
さっきは珍しいと言った着物もめちゃくちゃ似合ってて、普段から着てるんだろうなってのが分かった。だけど、やっぱりどこかで見たことがある。どこだっけ。勉強以外にばっかり使ってる頭をフル回転させて記憶を辿った。
そうだ、着物といえばあたしのおばあちゃんもよく着物をきてた。着付けはひいばあちゃんに教えてもらったって確かそう言ってた。
おばあちゃんはこの町で一番古くて大きい家に一人で住んでて、数年前に亡くなった。
おばあちゃんちにはずっと昔からの写真とかがいっぱい残ってて、遊びに行った時はよく見せてもらってたっけ。どんな写真かは忘れたけど、なんか特別な写真があったような気がする。
ダメだ。あと少しでなにか思い出せそうな気がするのに出てこない。思い出せなくてもやもやしてるうちに、次が最寄駅だという車内アナウンスが流れた。
男の人はさっきからソワソワしていてこっちに話しかけたそうな感じを出してる。電車がゆっくりになっていって、もう少しで駅に着くってところで男の人が立ち上がって優しそうな顔でこっちに歩いてきた。
その優しそうな顔を見て思わず叫んでしまった。
「そうだ、ひいばあちゃんのアルバムの人」
なんで見た目変わってないの?
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