目が覚めて、もう駄目だと分かった。部屋が私に根を張って、うつ伏せのまま身動きがとれない。部屋に籠りがちだったことを今更後悔した。学校でも職場でもなんとなく浮いていた自分は、どこにも馴染めない気質なのだと常々思っていたが、その逆は起こり得たようだ。肩より下、身体の前面一帯から侵入した十数本の太い根は、体内に無数の細い根を張り巡らせると、背中を貫いてそのまま天井へと伸びた。辛うじて動く首を窓へと向けると、都会の街から幾つかの巨木が生えているのが見えた。青空に浮かぶあの白い月を捕まえるつもりなのだと分かったが、それは木の意思が根を通じて感じられたからだった。

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