天国へと続くエレベーター

 彼以外の乗客は地下一階で全員降りた。視界が開けたためだろう、ドアの脇、整列したボタンの中に「 π 」の文字を見つけた。6階で降りるつもりだったが、興味本位で押してみた。偶然にも利用者がいなかったようで、エレベーターは1階を過ぎ、2階を過ぎ、3階を過ぎ、減速をはじめ、そして止まった。少しして非常ボタンを押したが、応答はない。携帯は圏外。彼は座り、お茶を飲んだ。30分ほど経って、彼は一度目のストレスのピークを迎え、空のペットボトルをドアに投げつけた。数滴の水が床に落ちた。ドアをこじ開けようとしたが、びくともしない。通気孔には手が届かない。壁はひどく滑らかで、登ることも不可能だ。諦めて、彼は狭い床に体を丸めて横たわった。目覚めた彼は眼前に、細かく振動する拳大の水滴を発見した。そしてようやく、彼は自分の最期を理解した。

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