第6話 お泊り
蓮夜と美咲が隣の席になった数日経ち、一週間が終わろうとしていた。
この数日で美咲は授業の間の短い休み時間に悠斗と愛奈と一緒に話しかけていたが、蓮夜の態度に変化はなく振られた話に返すだけだった。
金曜の放課後終礼が終わり、いつも通り帰るために鞄を持とうとしている蓮夜に悠斗が話しかけた。
「なあ、蓮夜?」
「ん?どうした?」
帰ろうとしていた蓮夜は鞄を持つのをやめて悠斗に問い返した。
「今日と土日泊まりに行っていいか?」
「構わないが、どうかしたのか?」
「テスト二週間前だから、テスト勉強ついでに遊ぼうかなと」
「分かった」
蓮夜は悠斗に頷きながら返し、鞄を持って立ち上がり悠斗に問いかけた。
「で、何人来るんだ?」
「三、四人で行くと思う」
「分かった。晩飯の準備をしておくから、八時までには来てくれ」
「了解」
悠斗の返事を確認した蓮夜はいつものように歩いて教室から出て行った。
蓮夜が出て行くのを見送って悠斗が愛奈と美咲に話しかけた。
「ということだが、二人も行くか?」
「私は行くわ」
悠斗の問いに愛奈は当たり前のように即答で返した。
美咲は悠斗の問いに戸惑いどう答えて良いのか分からずに問い返した。
「私も言っていいの?」
「人数的には問題ないし、美咲がだめとも言われてないからな」
「後から怒られない?」
蓮夜に嫌われて避けられる可能性があるため心配そうに悠斗に問い返すと、悠斗は何でも何でもないように返した。
「そんなに心配しなくても大丈夫だ。俺達が誘ったわけだし、避けられることはないさ」
「本当に大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。それで行くのか?」
悠斗の言葉に美咲は少し考えた後、小さく頷いた後返した。
「じゃあ、行こうかな」
「なら、七時に俺の家の前に集合で」
「分かった」
悠斗に返事を返して美咲達は鞄を持ち、二人と一緒に教室を出た。
「お父さん達、しばらく家にいないから美里も連れて行きたいけど、連れて行って大丈夫かな」
「美里ちゃんなら問題ないんじゃないか?」
「まあ、美里ちゃんが行きたいならいいんじゃない」
「そうね。美里が行きたくないって言うかもしれないし」
愛奈の言葉に納得して美咲は帰って美里に聞いてみようと思いながら二人と雑談しながら帰った。
美里は家に着くと、すぐに蓮夜の家に泊まりに行く準備を始めた。
準備がある程度終わった時に、美里が帰って来た。
「ただいま」
「おかえり」
美里が二階に上がってきてすぐに美咲は部屋の扉を開けて彼女に問いかけた。
「私、今日から日曜まで友達の家にテスト勉強で泊まりに行くけど、美里も来る?」
「高校生の勉強会に行くかって言われても……その友達って誰なの?」
「悠斗と愛奈と後、この間話した私のことを知らなかった人」
美里は美咲の言葉にしばらく考えて首を横に振って返した。
「私はいいわ。姉さんがいないなら私も違う人の家に泊まりに行くわ」
「そう。あんまり迷惑かけないようにね」
「姉さんに言われたくはないかな」
美里は呟くように言いながら自分の部屋に入って行き、美咲は苦笑で美里を見送った。
美里は部屋に入るとすぐにスマホを取り出して、電話をかけ始めた。
「あ、もしもし」
美里が電話をかけ始めてすぐに電話が繋がり、美里は嬉しそうな声で話しかけた。
美里は少し話した後電話を切ると、泊まりに行く用意をせずにリビングに向かった。
美里がリビングのソファーに座ってテレビを見ていると、美咲が大きめの鞄を持って二階から降りてきた。
「あれ?美里、泊まりに行かないの?」
「電話したけど、今週は無理らしいから来週泊まりに行くことにしたの」
「そう。じゃあ、しばらく一人だけど、戸締りとかしっかりとするのよ」
「分かってる」
心配そうな顔の美咲に対して美里は無表情で美咲を見て返した。
「じゃあ、行ってくるね」
「いってらっしゃい」
美咲はリビングで美里に見送られて泊まり用の荷物を持って家を出た。
家から歩いてすぐの悠斗の家の前に着くと、悠斗と愛奈がすでに待っていた。
「ごめん、待たせた?」
「いや、待ってないよ」
「私も今来たところ」
「そう。なら、良かったわ」
悠斗は愛奈と美咲の準備が出来ていることを確認して二人に声をかけた。
「それじゃあ、行こうか」
悠斗の言葉に二人は頷いて返し、悠斗も荷物を持ち直して歩き始めた。
二人も悠斗の横に並んで歩き、美咲は悠斗に問いかけた。
「蓮夜の家って悠斗の家から近いの?」
「ああ、歩きで五分くらいかな」
「意外と近いんだ」
美咲は蓮夜が意外と近くに住んでいることに驚きながらも、三人で雑談をしながら歩いた。
悠斗の言う通り、五分程で目的の蓮夜の家の前に辿り着いた。
悠斗がインターホンを鳴らすと、蓮夜がすぐに出てきて美咲の姿を見て少し驚いていた。
「別に誰が来ても問題ないよな」
「はあ、別に攻める気も無いよ」
(面倒なことに巻き込まれたら、悠斗に丸投げしよう)
蓮夜が文句を言う前に悠斗が言った言葉に蓮夜は呆れてため息をついた。
「まあ、入ってくれ」
蓮夜は玄関の扉を限界まで開いて悠斗たちを招き入れた。
「「「お邪魔します」」」
悠斗たちが中に入ったのを確認して蓮夜は玄関の扉を閉めた。
蓮夜は先導するように前を歩いてリビングに向かいながら三人に話しかけた。
「晩飯はもう少しかかるから、少しリビングで待っていてくれ」
「私も手伝おうか?」
「大丈夫だ」
蓮夜は美咲に適当に返しながらリビングの扉を開け、リビングに接しているキッチンに向かった。
美咲が悠斗を見ると肩を竦めて首を横に振った。
「あいつ、変なとこでこだわったりするから気にしなくていいよ」
「えっと、どういうこと?」
「一人でこだわって作ったから、最後まで一人で作りたいってことよ」
悠斗の説明に愛奈が補足しながら愛奈と悠斗はリビングの端に荷物を置き、ソファーで夕飯が出来るのを待った。
美咲は少し考えた後諦めて、愛奈達と同じように荷物を置いて夕飯が出来るのを待った。
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