彼女の魅力は異能ですか?
水龍園白夜
一学期
第1話 出会い
神宮美咲はいつものように学校に歩いて向かっていた。
学校に向かう途中多くの人に挨拶をされ、一人一人丁寧に返しながら彼女は歩いていた。
彼女が生まれ育った町は田舎というほど人が少ないわけでもなく、都会というほど人が多いわけでもない。
この町で彼女は物心がついた頃から自分を知らない人に合ったことが無かった。
彼女は外を出歩けば多くの人の目を集めるほどの美少女で、彼女の親友曰くその魅力は異能か何かでないかというほどの美貌の持ち主だ。
腰辺りまで伸ばした長い髪は傍から見ても分かるほど絹のように滑らかで、天使の輪が出来るほどツヤのある美しい黒髪で、顔も異常なほど整っており美しさと可愛さが黄金比で共存していると思えるほどだ。
身長は平均より少し低めでスタイルも理想的な黄金比を実現したように美しい。
だからこそ彼女は退屈していた。
周りに人がいないことを確認した彼女は小さくため息をついた。
(いつも通り、何も変わらないか……)
誰も寄せ付けないほど圧倒的な美少女である彼女に近づいて来るものは誰もおらず、友達を作る際も彼女が進んで話しかけなければいけないほどだ。
高校一年の十五歳の彼女にとって色恋沙汰に興味はあっても、彼女に告白するものは学校一のイケメンであっても勇者と呼ばれるほどだ。
彼女自身も恋をしてみたくても全員が彼女に嫌われないために取り繕っているため、付き合ってみたいと思える相手は一人もいなかった。
彼女にとって家族以外で気が置けない相手は物心つく前から一緒に遊んでいた二人の親友のみである。
そんな親友でも彼女に対しては多少気を遣っているのだから、彼女に対して遠慮なく意見を言うものは存在しなかった。
そんな中で十年近く過ごしてきた彼女は、ラノベや漫画などの非日常に憧れるほどに何も変わらない日常に飽きていた。
(そういえば、今日席替えか。超能力を持った転校生でも来ないかな~)
ありえないことを願いながら彼女は学校に着き、教室の自分の席に座って朝礼が始まるのを待った。
教室で親友二人と雑談をしながら待っていると、いつもよ少し早い時間に担任の松崎先生が教室に入って来た。
「お前ら、席につけー。入学して初めての席がをするぞー」
松崎先生の言葉を聞いて親友達は「席、近ければいいね」と言って自分の席に戻っていった。
松崎先生は黒板に座席表を書き適当な番号を書いて、くじを教卓の上に置いた。
「出席番号順に引いて、座席表の番号の下に名前を書いていけ」
松崎先生の指示に従い出席番号順に一人一人がくじを引いて、黒板の座席表に名前を書き始めた。
美咲の番が回ってくると教室中が注目し、くじを引いたものは彼女が近くの席になることを祈り始めた。
そんなクラスメイトに呆れながらも表情には出さずに美咲はくじを引いて座席表で席を確認して名前を書いた。
席は最後尾の窓側から二列目の席で、廊下側の隣の席にはすでに親友の一人、岡崎悠斗の名前が書かれていた。
(悠斗の隣で窓際だし、なかなかいい席かな)
全員がくじを引き終えて先生の指示で全員が移動を始めた。
最終的に美咲の周りは右隣が悠斗、前がもう一人の親友である山本愛奈、左隣はまだ一度も話したことのない生徒、左右斜め前の二つは親友二人の友達でよく一緒に話す友達と思っていた以上に過ごしやすい席だったことで美咲は機嫌が良く席を移動した。
移動し終え機嫌の良かった美咲は、左隣の一度も話したことのない生徒、神代蓮夜にいつものように見たもの全てを魅了してきた微笑みを浮かべて挨拶をした。
「神代君、これから隣の席同士よろしくお願いします」
美咲の挨拶に窓の外を眺めていた蓮夜は振り向き、眠たそうな顔で首を傾げながらも返した。
「よろしく?……」
蓮夜は首を傾げたまま頭を左手で掻きながら顔を美咲に向けたまま視線をいろんな場所に向けて何かを考え始めた。
美咲はそんな蓮夜の態度がいつもの挨拶をして返って来る反応と違うことが気になり、蓮夜に問いかけた。
「どうかしましたか?」
「……えっと、誰だっけ?」
「………………え?」
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