& there

「おい。歩きの巫女様は今日どこ歩いておられる?」


『いま、ドリームロール周りにいる』


 街灯カメラ越しの音声。


「ドリームロールか。今日は?」


『やってるな。大丈夫だろ』


「よし。じゃ、そこから移動したら教えてくれよ」


『わかった』


「巫女様は護らんとな」


『なあ』


「あ?」


『煙草。やめたのか?』


「やめたよ。見てなかったのか」


『コンビニの入り口で女と話し込んでるのは見たけど』


「まあ、そういうところだ。命が惜しくなってな」


『そうか。それはいいことだ』


「おまえのほうは。進展あったのかよ?」


『この前、進展があってさ』


「ほう」


『ふたりで、手を繋いでお風呂に入った』


「なんだそれ」


『進展してるだろ。すげえだろ』


「まあ、風呂か。んん。いいんじゃ、ねえの?」


 もうひとり。


「よお。恋愛初心者ども。元気か?」


『音声もシステムも良好だね』


「煙草をやめてから人生が明るくなったよ」


「俺は、この前。告白してきました」


『おっ』


「結果は」


「聞いてない」


「聞いてない?」


『なんだそれ。告白の意味あんのかよ』


「あるんだよ。彼女を安心させる。それが、俺にとってのすべてさ。こんど指輪買いにいく」


『あれ。指輪二個買ってなかったかお前』


「一個は落ちたよ、海に。まっさかさまだ」


「ご愁傷しゅうしょうさま」


『巫女の神託受けた指輪だったんだろ?』


「ああ。彼女の代わりに。落ちたのかなって。いまは思うよ」


「そうか」


『巫女がコンビニに入った』


「よし」


「行くか。街の安全を守りに」


 夜を歩く。


 男がふたり。カメラ役がひとり。

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