ナイトウォーク(15分間でカクヨムバトル)

春嵐

01

 この街に来たのは。


 夜景がきれいだから。


 こんなにもネオンがあるのに。空への反射が抑えられていて、星が見える。ネオンの灯りも、優しい色のものになっていた。きっと、ネオンを配置する人が素晴らしいのだろう。


 夜を、歩く。この街。夜になっても人通りの多いところと、人通りの少ないところに分かれる。どちらにも街灯カメラがあって、情報を人工知能が整理していた。あんしん安全な設計。


 そのなかで。自分のできることをするために。ゆっくりと。夜の街を歩く。


 この街には、正義の味方が何人もいる。街を守るためならどんな犠牲もいとわないひと。銃を撃つのがうまいひと。内偵をしているひと。あと、最近煙草をやめたひとなんかもいる。


 自分は。お祓いをする。人ではない、わるいものと対峙するのは、別なひと。わたしのお祓いは。なにかを消したりこわしたりするものではない。


 そこにいる誰か。何かを、護る。お祈りのようなもの。効き目も、まちまちだった。


 立ち止まった。


 駅から少し行ったところの、大きめの交差点。コンビニの明かりだけが、光っている。


 上を。見上げる。いい星空。


 ゆっくりと。


 静かに。


 歌を。口ずさむ。


 交差点を。ゆっくりと。歩く。


 これだけ。


 わたしは。正義の味方でもなんでもない。ひとりの、夜歩くのが好きな、普通のひと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る