ママー!おかえり~!

青野ひかり

第1話 ママは大変

「ねぇ~!ジュースぅー!早く飲みたい~!」

食卓のイスにちょこんと座った、三歳のカズ君の声が部屋中に響く。

「はぁーい!ぶどうとりんごがあるけど、どっちにする?」

私は大急ぎで冷蔵庫から、紙パックのジュースを取り出して、尋ねる。

「りんごでしょ!」

何故か偉そうな言い方のカズ君に、私はあんたの召し使いかッと心の中で毒づく。

(私は召し使いじゃなくてあんたのママだよ~!)

「ねぇ~。カズ君、T-REXが見たいなぁ~!」

と可愛らしい声を出す三歳児。

T-REXとは言わずもがな、恐竜のティラノサウルスのことで、カズ君の最近のお気に入りだ。テレビで恐竜特集をするたび、録画してDVDに落としている。


私は「あんまり見すぎたら駄目だよ!」

と言いながらビデオデッキにDVDをセットする。



やっと、静かになったと思ったら、隣の部屋から「うぇぇ~ん!」と恐怖の泣き声が聞こえ始める。

カズ君の弟で一歳半のユウ君がお昼寝から目覚めたのだ。

ユウ君を抱っこして、よしよしとあやすと、今日は素直に泣き止んでくれた。

ユウ君の身体はあったかくて、子ども特有のいい匂いがして、気持ちが良くなる。


(ユウ君はカズ君より私に似てるなぁ~。カズ君も笑うと似るけど、ユウ君は真顔でも似てる。)

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