視線の先にいる誰かを

みなづきあまね

視線の先にいる誰かを

秋がいつの間にか到来し、真夏の暑さが嘘のようだ。洋服を選ぶのが楽しい時期になり、毎日服や靴、化粧品にワクワクしたり、新しいものを買ってしまおうかなと、ネットサーフィンに時間を費やしている。


クールビズも終わり、最近彼もネクタイを締め始めた。以前私が「ネクタイの趣味が良い人が好きだな」と、同僚と何気なく話していた時に近くにおり、それ以来前よりネクタイのバリエーションが増えたのは偶然?とたまに期待している自分がいる。


彼がかっこよくなるのは嬉しい。でも、最近気になっていることがある。元々スマホ依存を公言しているので違和感はないのだが、やたら仕事中にスマホを見て、何か打っているように見える。


彼がアプリも使って彼女募集をしているのは、社内では私しか知らない。以前ちょっと盛り上がった際に、特別に教えてもらったのだ。彼に片思いしている、と断言できるのはこれが原因だ。だけど幸か不幸か、デートまで漕ぎつけても、実際付き合うには至らずに終わるばかりらしく、その度に慰めながら裏ではほっとしている私がいる。


でも、今度はいい感じに進んでいるのかも。スマホを頻繁に触る姿を見て、その視線の先に私が知らない女性がいるのかも、と考え始めた。そんな姿を見るたび、私は仕事中にも関わらず、泣きたくなる。


また失敗してしまえ。意地悪とわかりながら、私はそう願っている。彼に彼女ができれば、一緒に帰ったり食事に行くことはなくなるし、そもそも私と楽しく話してはくれなくなるはずだ。今は少なくとも、「職場の中では特別仲良しの女性」の立ち位置は確保している。これは、探りを入れてくれた親友からのお墨付きだ。


ここに甘んじたくはないが、恋愛は相手次第。つい2週間前までは、今まで以上に頻繁に連絡をとったりしていたのに、また元に戻ってしまったことや、帰宅する頻度も減っていることが気にかかる。


ほら、またそうやってスマホを眺めるんだ。失敗してしまえばいい。そして私に残念な顔で報告してくれればいい。そしたらいかにも残念、といったそぶりで、理解ある女を演じてまた慰めてあげるから。

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視線の先にいる誰かを みなづきあまね @soranomame

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