第10話 【日記】
四月×日(▲曜日)
そういうわけで日記を書くことになった。不本意だったが、文彩先輩には逆らえない。それに自分から部室を訪ねたわけであるので書かないわけにはいかない。そういえば文章を書くのはおよそ五、六年?ぶりになる。準備運動もないのにこなせるのだろうか。日記なんて書いたことがない。どうしよう。とりあえず頭の中で考えていることを整列せずに並べているのだが、いつまで続けられるかは判然としない。もう気持ち悪いし、吐き気が止まらない。いつまで体が持つか分からない。もし今死んだらこれが遺書になってしまうのだろうか。……話が逸れた。文彩先輩は何を書いても構わないといっていた。何でもよい。ストーリーを仕立てなくてもいいという。だから以下には好きな食べ物を羅列することにしたい。初回は近所の定食屋のメニューを載せることにする。唐揚げ定食670円(税込み)、しょうが焼き定食800円(税込み)、ミックスフライ定食にサイドメニューで牡蠣フライを追加1,250円(税込み)……。スペースの関係上、このくらいにしておこうか。
四月○日(■曜日)
ついに書くことがなくなった。思えば俺は書くために毎日を過ごしていた。毎日通る通学路のちょっとした変化、体の調子、いつも同じ車両に乗っている乗客に気づくようになった。観察眼を養う。そういう意味ではよかったのかもしれない。しかし、それも最初だけだった。もうネタ切れだ。いくら感度の良い目をしていたとしても、普通の人間の日常など高が知れていると思う。何か面白いことはないか。突然彗星が落ちてくる「君の名は」的現象をこのとき以上に望んだことはないだろう。よって、今日は俺の欲しいものを述べることにしたい。断線したから新しいイヤホン、電源が急に落ちるから新しいスマホ……くらいか。
四月▼日(×曜日)
曇り空。気分が乗らない。特になし。
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