第3話 俺が国語アレルギーになったわけ

◆◆◆

 小休止。

 さて、二週間前のあの日の出来事と、そもそもなぜ文芸部に入部し小説なんか書いているのか。それに移る前に、俺が国語を嫌いになった理由をここではっきり述べておきたい。

 そうだな、まずは、小学生の頃に遡る。

 あれは家庭科の調理実習だった。俺はフルーツポンチを作っていた。白玉だんごをフルーツと混ぜるだけの調理というには簡単すぎるものだったかもしれない。けれどそんなことはどうでもよかった。俺はフルーツポンチが大好きだった。俺のみならずあの甘くてすっぱいフルーツポンチを嫌いな小学生なんて存在しないだろう。とにかく食べられればよかったのだ。食べられさえすれば、女子に言われた「将来、いい旦那さんにはなれそうにないね」なんて悪口は雲散霧消しただろう。

 しかし――。しかし、だ。

 俺は食べられなかった。体の熱っぽさは興奮ではなかった。大好物のフルーツポンチを、インフルエンザの魔の手に奪われてしまったのだ。結局、俺は作っただけで早退するという悲劇に見舞われたのだった。

 それから、二週間後のことだ。国語の時間に詩を書くという課題が与えられた。

 昔から作文は苦手だった。それは詩にしても短歌にしてもそうだ。気持ちを伝えることが苦手なのではない。何を書いていいか分からないのだ。小学二年の時の放課後。いつまでも作文を書き終わらず、担任に残されてとうとう一人になったとき。教室に差し込む斜めの夕日は生涯忘れられないだろう。

 けれど、今回は違った。ありのままの気持ちを詩に乗せる。普段ならできないことが、フルーツポンチという題材があった。

 俺は意気揚々と書いた。筆が踊って自分のスピードに驚いた。一番に終わった俺はその場で発表させられることになった。

 そして――。

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