第2話

 ──桜か、僕も今日から高校生なのか。


 昔から、それも中学生、小学生の頃から僕には友達と呼べるような人はおらずいつも一人で過ごしていた


 だから、高校生になったからといって友達ができて楽しんで……なんてことはありえない。そもそも僕は人と関わることを今までしてこなかった、自分に自信がないからというのもあるがもっと別の理由があるような気もするのだ


 これからの学校生活に対しても不満はない、人と関わらないだけだ。一人のほうが気楽なものなのだ、と自分に言い聞かせて目の前の門をくぐる


 辺りを見回すと同じ新入生である一年生の男女が楽しそうにワイワイ話しているのが見える、それを横目で見ながら通り過ぎようとしたときやや高めの声が響いた


 「ねぇねぇ! 君、名前はなんていうの?」


僕はその声に反応するどころか無視をしてそのまま教室へと急いだ。あそこで名前を言う必要性がわからなかった、どうせ僕は人と関わらないようにこれからも、この先もずっと過ごしていくんだから


 「ちょ……ちょっと! 無視!?」


後ろの方で誰か知らないひとが叫んでいたが僕は気にせずにすたすたと教室へ向かった


 誰かと関わったところで、人間関係なんて複雑なものに浸れるわけもない。恋愛だの友情だの僕には全て似合わない──ずっと、そう思っていた


          2


「ふぁ〜」


校長先生やら先輩達の言葉が終わり入学式の後の教室での説明会ということで一同がゾロゾロと歩くなか僕は静かにあくびをした。こんなの早く終わらせて帰ろう……そう思って僕もゾロゾロと目の前の集団についていった


 教室について席に座ったとき、横になった人からよろしくと言われたが返事をする気にもなれず黙々と前を向いていた。多分これで高校生活は一人で暮らしていくことが確定した。僅かな寂しさを覚えてしまったことに多少疑問に思いながら先生の話を聞いていた


 ──事件は放課後におきた。いや、この場合は事件というよりは僕にとっての予想外のことがおきた


 「──くん!?」


帰ろうとして人気のない裏路地を歩いているとそこにはクラスメイト……だったと思われる女子が路地に座りこんでいた。見ると顔色も悪くどこか悪いのだろうか? と思ってしまった


 「……君は、どこか悪いのか?」


久しぶりに出す声だった。なんでだろう、なんで僕はこの人に話しかけれたんだろう。理解ができない、人と関わることの意味も分からずひたすら孤独に生きてきたこの僕が、と頭の中でさきほど出した言葉が渦巻いて脳裏にこびりついた


 「悪い……ところはないよ、ただ、うん。少し疲れてたみたい、心配してくれてありがとう」


そう言って彼女は立ち上がった。別に僕は彼女のことを心配したわけでもないが気にしない、なんだか悪い気がしなかった


 それじゃあ、と言って彼女が立ち去ろうとしたとき。僕の口からは無意識的に言葉が紡がれていた


 「君の、名前、は?」


彼女は振り返ると少し驚いた顔をして、にっと笑うとピースサインを目の前に突き立ててこう言った


 「水野紗菜」


……………………………………………………

第2話となりました。

最近体調が悪く執筆の時間が減っておりますが次回第3話も書くのでどうぞよろしくお願いします。

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