そして僕は彼女に救われた

月猫翡翠

第1話

 外をみると桜の花がひらひらと落ちていた


 「そうか……あれからもう1年か」


僕は今日から高校2年生となる。入学した当初はとても居心地の悪くて友達なんか一生できないよな、と言ってた。ただ、そんな僕に人と関わることの美しさ、楽しさ、そして悲しさや儚さを教えてくれた「彼女」は──


 「西野くん」


名前を呼ばれてふと後ろを振り返ると「彼女」の親友だった上原さんが立っていた。その表情からは何を考えてるかは分かる。上原さんも未だに「あの時」のことが頭から離れていないのだろう、無理もない。僕も、正直に言ってしまえば夢であってほしいと願っているくらいだ


 「西野くん」


もう一度、今度ははっきりと僕の名前を呼んだ


 「なにか、あったのか?」


そういうと上原さんは少し苦笑いして次に手を差し出した。僕は反射的に上原さんの顔をみると少し照れくさそうに微笑んだ


 「私はまだあんた……西野くんのことを認めてるわけじゃない、けど。あの子がなんであの時ずっと笑っていたのか分かってきた気がする、だから私は少しずつだけど西野くんのことを知っていきたい」


上原さんの手を握ると柔らかく、そして暖かい。人の体温と自分の体温同士が触れ合うのはとても久しぶりに思えた、気付くと僕の目から涙が少しずつ出ていた


 「ほら、あんたも男ならそろそろ前むいてしっかりしたら? あの子も、きっとそれを望んでるわ」


「ほんと、その通りかもな」


  僕と上原さんはあはは、と笑いあった


 いつまでも──「彼女」のことを想いなが


……………………………………………………

1話はここまでとなります。

2話からが本編のスタートとなります、1話はプロローグ的な立ち位置で書かせてもらいました。次回もよろしくお願いします。




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