第12話 依頼・・・

「ここ数日、町と村を結ぶ街道に山賊が住み着いたみたいで何人か被害にあってるんだ」

トーマスさんは真剣な顔でいう

「被害って、襲われて殺害されたとか?」

急な話に息をのみ聞く

「いや、そこまではないさ。でも金や積んでる荷物やらは取られている。」

「なるほど・・・どこかで退治というか山賊を倒すみたいな人たちはいないんですか?」

正直、俺個人に頼むよりそっちの方が確実な気が・・・

「いることはいるんだが・・・町の冒険者に頼めばやるが今はモンスターの繁殖時期と重なって遅れるようなんだ・・・」

あ~確かに掲示板に書いていたな~

「う~んでもなぜ俺なんです?」

「あんた、結構ここら辺のモンスターを倒している様子だったし、素手でモンスターを倒せる逸材だ!山賊ぐらいどうになならないかとね」

困ったな・・・

「そうですね~う~ん・・・」

本音で言うとかなりやりたくない

なぜなら、モンスターはどんな形でもモンスター

倒した後ファンシーな見た目に心を痛めたが

消えてしまえばアイテムになるのでまだ心は保たれた

しかし、相手が山賊

つまりは人間となればことは変わる

倒す=殺す

の図が完成する

それはつまり人殺しをするということ

物騒な考え方かもだがゲームでは山賊は基本倒したら動かない

つまり死んでいるという形だ

あれはゲームという架空の世界だから許されていたというか

出来ていたことで自分がするとなると・・・

「にいさんでも無理かい??もちろん報酬はだすよ!!」

「そうですね・・・」

ここは異世界

法律というものがなくその土地でまちまちな規則があるだけ

だとしても!

俺は人を殺すということに耐えられるのか・・・

もとより人を相手にできるのか・・・

「ちなみに相手は最近できた山賊みたいで構成はもうわかってるよ」

「構成ですか?」

「あ~!構成人数は5人で男3の女2の若いグループらしい」

「女!!」

ここにきて女とか無理だろ・・・しかも若いとか・・・

「申し訳ないですが、さすがに女性を手にかけることはできません。」

そういって頭を下げようとしたとき

「手にかける?いやいや、今回は捕えてくれればいいんだよ!!」

「捕える??」

「そうだよ!!相手は人間だ、さすがにサクッとてわけにはいかないよ」

俺の思い違いにトーマスさんは笑う

「あんた、見た目怖そうなわりにやさしいね~」

「いや、優しいっていうかそれとこれは・・・」

「まぁ~そうだな!ほかのところはわからないがここでは基本人を殺すのはタブーだ」

さらにつづける

「しかも、山賊ってもそいつらも人殺しをしていない奴らだから基本は捕まえて牢にぶち込むってところだ!」

「そうなんですね・・・ふー」

よかった・・・異世界って言ってもある程度の良識がある世界で

「もし人殺したやつが相手ならにいさんには依頼しないよ!ちゃんとした冒険者が組合に届け出をもらい始末する!ほかの以来より先にな!」

「よかったです」

「やっぱり、にいさんは変わってるね~旅人のわりにあまり世間を知らないよな??」

「あ、あ~駆け出しなもので」

笑ってごまかす

「まぁ~いいや。でどうだい?できそうかい?」

あらためて聞かれるが!

相手は5人・・・一人でどうにかなるものなのか?

「ちなみに相手の情報は他にありますか?」

「そうだな、どうやら本当に最近できたみたいであまり装備は整ってないみたいだ」

「?それなら村人、もしくは町の人で対処できないんですか?」

単純にそんなに力がないなら対処できそうなもんだ

「たしかに、襲われたものは反撃にでたらしいんだが、どうやら山賊頭がそこそこの強さらしく抑え込まれるらしい」

「なるほど・・・」

伊達に山賊ではないということか・・・

「村の人や町の一般市民は基本的に戦ってないからな、少しでも心得があるやつには歯が立たないさ」

そうだよな

だから一般市民なんだもんな

「そこであんたなんだよ!!モンスターとの戦いの経験があれば山賊にもどうにかなるんじゃないかってね!!」

「・・・ちなみに、俺一人でってことですかね?」

「もちろん、うちのニックを付ける!ニックは狩りの経験があるから戦力になるだろ!!」

ニックさんか・・・

最悪、ニックさんには隠れてもらってヤバくなったら助けてもらう

そんな作戦で行けば命を落とすことはないかな?

「あと、捕縛に必要なアイテムはこっちで用意する!!」

「・・・わかりました。やります。」

「ホントかい!?よかった~!!」

トーマスさんの顔がほころんだ

だがそこで

「正直にいうと対人戦は俺自身初めてです。絶対に山賊をとらえることができるかどうかはわかりません・・・」

トーマスさんはそのほころんだ顔をまた戻し

「あぁ!わかってる!!にいさんは出来ることをやってくれればいい!無理なら無茶なことはしなくていい!頼んでる立場だ!命を懸けてくれなんて言えないしそんなことは望んでもないさ!!」

トーマスさんの言葉に安堵する

村の顔役だけあってしっかりとした考えがある人で良かった

これがゲームみたいにホイホイ

“命を懸けてくれ”

なんて言われたら・・・

思っただけでも血の気が引く

現実的に命を懸けるというのはなかなかなことで

簡単にはい!!なんて言えない

出来ることなら保険をかけていく・・・

小心者の考え方かもしれないが

俺はゲームや漫画の中のヒーローじゃない

今はいっかいのおっさんだ

ダメージを食らえばなかなか回復しない

ファンシーなモンスターにすら手こずる

唯一の取り柄は素手でモンスターを倒すこと

あとはここまで生きてきたことで覚えた知識

これしかないのだ・・・

いつか大きな力・・・なんてものも手に入れれたら変わるかもしれないけどね

「引き受けてくれたあんたにこれ!報酬とは別にお礼としてね」

「え?」

盾を渡させる

「これはここらへんだと一番防御に定評がある皮で出来た盾だ!」

「でも、まだ何も・・・」

「いいんだよ!にいさんは村に立ち寄っただけの旅人なのにこんな依頼を受けてくれた!そのお礼だ!!」

このおじさんは・・・

ホントに気がいいというか

人が出来ているな・・・

こんな風に人とふれあって感謝されるなんて

なかったな・・・

現実の世界では

本当にずいぶんと無い感覚だ

「ありがとうございます!!」

「よし、じゃ山賊の場所と情報を改めて教えるな!!あとニックも呼んでくるよ!!」

そういってトーマスさんは出ていく

「よし!!」

自分に気合を入れていざ!!

山賊をとらえますか!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る