第40話 ようこそアルマニ領へ
国境ではステファンさんが待っていた。
「ヒロシ様、よくぞご無事で。本当に良かったです。
倒れた警備隊員を見て飛び出して行かれた時は本当に驚きました。
何かあったら一大事なんですから、ご自分のお立場をよく考えて頂きませんと。」
ステファンさんおかんむりです。
「ステファンさん、すいませんでした。
あっそうだ、こちらがインディアナ神国の使節団の方々です。」
「あっこれはこれは、ご挨拶が遅くなりました。
わたくし、このアルマニ領の代官職を務めさせて頂いておりますステファンと申します。
お見知りおきを。
それで、スタンピードの件ですが、大変なことでした。
お怪我等ございませんでしょうか?」
「うむ、ステファン殿、出迎えご苦労様です。
我の名はスペル。インディアナ神国の神軍隊長をやっておる者です。
今回のスタンピードは、ヒロシ殿のおかげで魔物を全て壊滅させることに成功しました。
我々にも怪我はありませぬ。」
「あの武勇に名高いスペル様ですね。
本当に怪我が無くて良かったです。
さあ皆様、わたくしが先導致しますので、城の方まで参りましょう。」
俺はステファンさんの馬車に乗せられている。
もちろん、馬車の中でかなり叱られたよ。
まぁ、あれだけの魔物がいたスタンピードだからね。
普通ビビるよな。議員さん達もビビっていたみたいだし。
あのスペルさんがおかしいんだ。
うんきっとそうだ。
しばらくして、俺達とインディアナ神国の使節団御一行はアルマニ城に到着した。
皆さんお疲れのご様子だし、面会相手の俺とは既に挨拶も終わってるから、すぐに宿舎に移動してもらった。
皆さん喜んでるけど、若干1名は俺と練兵場に行きたそうにしていた。
もちろん断ったよ。
受けたらまたステファンさんに叱られるからね。
スタンピードよりもそっちの方が疲れるもの。
とりあえず面会は明日の午後ということにして、俺達も部屋に戻った。
翌日、朝の散歩の途中で練兵場に寄ったら、スペルさんが素振りをしていた。
さすがに他所の兵士を捕まえて稽古するほど、野蛮では無さそうだ。
昨日ステファンさんとも普通に話していたしね。
案外マトモなのかと思っていたら、こちらに気付いたご様子。
凄い勢いでこちらに走って来た。
「やあヒロシ殿か。
早速手合わせを願いたい。
ヒロシ殿は魔法の方が得意か?
武器は何を使うんだ?
得意な体「ちょ、ちょっと、矢継ぎ早に言われても。
それに今は散歩の途中で、早く帰らないとステファンさんに叱られますから。」術は……ふむぅ」
すっごく寂しそうな顔をしてるよ。
ちょっと可哀想になってきた。
「面会の後、少しであれば時間を取れると思います。」
そう言うと、寂しげな顔が満面の笑みに変わり、『では楽しみにしておりますぞ。ガハハハー』と豪快な返事をして宿舎の方へダッシュして行ったのだった。
そして午後、面会は終始和やかな雰囲気で進んでいる。
昨日既に会ってるし、一緒に魔物退治もして仲良くなっちゃたし、ステファンさんから要注意人物だって言われてたスペルさんは、この後の手合わせにワクワクしているみたいで気もそぞろだし。
議員の3人は次のとおり。
マークさん インディアナ神国内に10店舗を持つ大商家マーク商会の会頭。
クエスさん インディアナ神国だけでなく周辺諸国でも有名な魔道具職人で、クエス工房の工房長。
エクスさん 古代文明を研究している学者で、様々な知識を広く深く持つ天才。インディアナ神国議会会長。
「ヒロシ様、昨日はほんまありがとさんでした。
ほんま助かりましたわ。
せやけどヒロシ様、あんさんほんま強おまんな。
あんなようけの魔物を一瞬でやっつけてしまわはるやなんて、わてもあっちゃこっちゃで強い人見てまっけど、あんさんみたいな強さは初めてや。
ヒロシ様は命の恩人でっさかい、何でも言うてくれはったら、このマーク、全商会をあげて協力させて頂きますさかいな。
今後ともご贔屓に。
あんじょうお願いしまっせ。」
何故か分からないけど、マークさんの言葉、凄い関西弁。
友達に関西人がいたから聞き取れたけど。
ちなみにさっきのマークさんのセリフを翻訳するとこんな感じ。
『ヒロシ様昨日は本当にありがとうございました。
本当に助かりました。
だけどヒロシ様とてもお強いですね。
あんなに多くの魔物を一瞬で倒されたのですから。
わたしも彼方此方で強者を見聞きしていますが、あなたが最強でしょう。
ヒロシ様は命の恩人ですので、どんなことでも結構ですのでお話し下さい。
全商会をあげてご協力させて頂きます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。』
クエスさんは名古屋訛りでエクスさんは何故か江戸っ子弁のべらんめぇ調。
まあ3人とも好意的に付き合ってくれるみたいで良かった。
ちなみに気配察知を強めてみても悪意は全く感じられ無かったよ。
まあ、マークさんには少しだけ打算の感情が混じってたけど、商人だから仕方ないよね。
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