第27話 ミーアがスタイロンさんの店の専属になりました。
ラスク亭を出てスタイロンさんの店に向かった俺達は、途中の商店街で身の回りの買い物をしている。
せっかく家をもらったのだし、お気に入りの家具とか置きたいじゃないか。
主にミーアがだが。
魔族とはいえ、年頃の女の子なんだから。…うん?たしかミーアって350歳じゃなかったっけ。
年頃って言っていいのかなぁ。
「ヒロシ!今余計なこと考えてたでしょう!
君は顔に出やすいんだからね。」
危ねー。気をつけなきゃ。
屋台に売っていたクレープみたいなやつでミーアの機嫌を取りながら、買い物とウインドウショッピングを続けていると、毛皮の絵の看板が見えてきた。
スタイロンさんの店だ。
入り口に立ち、中に入ろうとすると、屋敷の方角から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
あっメイドのえーと?
「サリナさん、どうしたの?慌てて。」
名前を思い出せずにいたら、ミーアが先に声を掛けた。
メイドさんがゼイゼイ言いながら俺に話し掛けてきた。
「ヒロシ様、王妃様とイリヤ姫様がお屋敷でお待ちです。
すぐにお戻り願えますでしょうか?」
ええー。屋敷に来ちゃったよ。それも昨日の今日で。
「とにかく戻ろう。あっ、ミーアはまずいか。
えーと…「サリナです。」そうサリナさん、ちょっと待っててね。すぐだからね。」
俺はミーアの手を引いてスタイロンさんの店に入っていった。
キャリーン。
「おっ、ヒロシとミーアか。また何か大物を狩ってきたのか?」
「スタイロンさん。こんにちわ。
申し訳ありませんが、しばらくミーアを預かってくれませんか。
詳しくはミーアに聞いて下さい。
そうだ、ラスクさんから伺いました。
専属の件はありがたくお受けします。
一応ギルドにはミーアを専属って登録しておきます。
じゃあ急いでるんで。ミーアよろしくな。」
俺は急いで店を出て、サリナさんと一緒に屋敷に戻った。
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「アイツあんなに急いでどうしたんだ?」
「ヒロシが王様からお屋敷をもらってな、それで王妃様が屋敷に来てサリナが迎えに来たんだ。」
このミーアという魔人の話しは、なんだかよく分からん。
王家といえば、先日お姫様一行が森で魔物に襲われた時に神の加護で救われたという噂が立ったが。
それで、その時の魔物がシルバーウルフだっ……た!
たしかヒロシのやつが持ってきたのもシルバーウルフだったな。
なるほどな。それで王家から屋敷の下賜って訳か。
あのヒロシのことだ。欲も出さずに褒美も辞退したのだろう。
それで王家から気に入られたって訳か。
なるほどな。こりゃ面白いことになりそうだな。
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急いで屋敷に戻ると、リビングで王妃様と執事のセバスさん、メイド長のマイヤーさんが談笑していた。
「これは旦那様、気が付きませんでご無礼致しました。
久しぶりに王妃様とお会い出来てこのセバス、楽しくて不覚を取ってしまいました。」
おや、セバスさんやマイヤーさんは王妃様と知り合いなのか。
いったい何者なんだ?
「王妃様、昨日はありがとうございました。
それと、こんなに良い屋敷を頂きまして。」
「ふふふ。ヒロシ様、この屋敷は気に入って頂けたかしら。
王家が所有する数えきれない数の屋敷の中でも、この屋敷はわたしのお奨めなのよ。
だから、セバスやマイヤーに任せているのよ。」
よく理解出来ていない俺にセバスさんが補足してくれる。
「代々王家は国内に屋敷を多数保有される習わしになっております。
これは、この国を統一し建国された初代王が戦乱で貧困に喘ぐ国民達に住む家を提供されたことが始まりてす。
やがて国が復興し、民が住居に困らなくなってからも、働き先が無い民の雇用先として大きなお屋敷を用意したりだとか、家を持てない貧困層の民に対してのアパートを建てたりと、様々な形で運用されています。
近年、お屋敷については主に恩賞の代わりに貴族や社会貢献の高い一般市民などに与えられることが多くなっています。
ヒロシ様もこれに該当すると思われます。
王家の屋敷を賜ることは貴族のステータスであり、一般市民の成功の証でもあるのです。」
「そうよ。セバスの家は代々この管理を任されているの。
今は代替わりをして隠居の身なのだけれど、この屋敷だけはセバスがしっかり守ってくれているのよ。」
ということは、セバスさんの息子さんは...
「ではユズル男爵様はセバスさんの。」
「はい、息子でございます。わたしは先代の王が代替わりされた折に終の住処とされたこのお屋敷に愛着を持っておりまして。
先王が崩御された後もこのお屋敷をお守りすることに決めたのです。
このお屋敷だけは先王が亡くなられて10余年の間、陛下も王妃様も誰にも下賜なされなかったのですが、ヒロシ様が今回王妃様のご希望によりこちらにお住まいになられたわけです。
ここに働く者達は先王の時から使えさせていただいているものがほとんどであり、陛下や王妃様にもご配慮頂いておる次第でございます。」
とんだ謂れのある屋敷じゃないか。
こんなとこ、俺がもらっても?
「ヒロシ様、ゆくゆくは貴方も王家の一員になる可能性があるのです。
気にしなくて良いのですよ。」
してやったりみたいな悪戯な笑顔の王妃様が軽い口調で話す。
あんまり軽い口調だったから、危うく聞き過ごすところだったよ。
「あのー今王家にどうとか。」
「そうよ。陛下もわたしも貴方を気に入ったの。何よりもこの子がね。ねぇイリヤ。」
相変わらず軽い口調の王妃様の隣りで、姫様が真っ赤な顔をしてあわあわしている。
いや、彼女いない歴15年の俺も見た目は一緒かも。
「おやおや、イリヤ様。これはおめでとうございます。
イリヤ様の教育係りを幼い頃から担当させて頂いておりましたわたしも大変嬉しゅうございます。」
マイヤーさんの声に「やられた!」と心の中で嘆く俺だった。
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