第126話 副団長は王子の友達が増える

ルーデリンの王族は一箇所に幽閉されていた。


厳しい兵士たちを素通りして、部屋に入るとそこには俺と同い年くらいの男とその姉と思われる二十歳くらいの女性、そして妹らしい8歳くらいの双子の女の子がいた。


この四人が残された王族のようだ。


軟禁されているけど、見た感じ問題なさそうだ。


とりあえずは姿を見せるとしよう。


そう思って隠密をとく。


来訪者の俺の存在に気づくと、男が驚いたような表情を浮かべた。


「驚いたな。あれだけの警備の中、悠々と入ってくるお客さんが居るなんて。歓迎したけどご覧の通り軟禁されててね。おもてなしはできそうにない」

「そのような期待してないので、お構いなく」


魔法で部屋を防音にしてから男を見ると、男は俺を見てしばらく考えてから思い出したように手を叩く。


「そっかそっか。どこかで見たと思ったらランドリーの騎士様か」

「騎士様!?お兄様、この方あの騎士様なの!?」

「本当?本当?」

「ああ、そのようだよ。僕らのこの軟禁場所に楽々入れるのも証拠のひとつだけど、前に見た彼の姿絵と照らしても確信を持って断言できるよ」


その言葉に双子の姉妹は大はしゃぎ。


二人で手を重ねて喜びの声を上げる中、姉と思われる女性が慌てて制止しようとすると、それを止めたのはその男だった。


「大丈夫だよ、姉さん。ここまで入れる騎士様が用心してない訳ないし、外の兵を処理したか……あるいは何らかの魔法で音くらいは遮断してるだろうしね。その辺当たってそう?」


自信ありげな様子で不敵に微笑む男。


ふむ、こいつなら大丈夫そうか。


「ここで何が起ころうと、外には絶対バレないのは保証しましょう。確認したいのですが、あなた方がルーデリンの残された王族で間違いないでしょうか?」

「出来損ないの次男と可愛い姉と妹の王族で相違ないよ」

「も、もう……可愛いは余計だってば、アルくん」

「可愛いものは可愛いんですよ、姉さん」


目の前でイチャイチャされると、アリス欲が刺激されて良くない。


早く帰りたくて仕方なくなる。


にしても、姉弟と呼ぶには違和感のある姉と弟だな。


「ほら、姉さんったらまた可愛い顔してる。昨日も食べたのに食べ足りなくなるよ」

「もう……アルくんってば……」


……いや、というか、やり取り的に絶対それ以上の関係にしか思えない。


冗談にしては姉が女の顔をし過ぎてるし、弟の方は上手いこと隠してるけど男を見せている。


「騎士様、騎士様。お話聞かせて!」

「聞きたい聞きたい!」


イチャイチャして制止がなくなったことで、ちびっこの双子が俺に寄ってくる。


好奇心旺盛なのだろうけど、幽閉されてるにしては明るいなぁ。


しばらくイチャイチャとテンションの高い双子の相手をしてから、双子を姉が引き受けてから男が「こほん」と咳払いをした。


「さて、じゃあ簡単に自己紹介を。僕の名前はアルフェイド・ルーデリン。先王の次男でこの国の第2王子だよ」

「エクス・ロストです」

「うんうん、知ってるよ。君が有名な騎士様なんでしょ?にしても、固い口調だけど緊張してる訳じゃないよね?僕が王族だから畏まったのかな?だとしたら、もっと砕けて欲しいな。僕としては同い年の友人が少なくて困っててね。君なら相応しいと思うんだけど……どうかな?」


出会った頃のリンスを思い出すノリ。


いや、リンスの場合はもう少し王子様っぽかったな。


何にしても、相手からの希望なら断る理由もないか。


「……分かった。これでいいか?」

「うんうん、柔軟でいいね。なんなら呼び捨てにしてくれていいよ」


グイグイくるな。


とはいえ、こちらとしてもその方が楽だ。


「なら、俺のこともそうしてくれ」

「了解、エクス」

「ああ、アルフェイド」

「んー、やっぱり呼び捨てはなしで。なんかこそばゆいし、アルでいいよ。皆そう呼ぶし」

「はいよ、アル」


気まぐれな王子様だこと。


口調とは裏腹に中々油断ならなそうな佇まいもあるので、油断はしないでおこう。


そうして、その日、閉じ込められた部屋で俺はルーデリン王国の第二王子のアルフェイド・ルーデリン……略称、アルと友人になるのだった。


にしても、王族は美形と決まってるのだろうか?


フレンドリーでコミュ強な上、イケメン。


姉と双子の妹ちゃん達も美人さんだ。


双子はまだ子供だし、美少女さんかな?


まあ、だからと言ってどうこうないけど。


俺がアリス以外の異性に何かを思うことはまずない。


唯一あるとすれば、双子を見て、俺とアリスの子供が双子だった場合も賑やかそうで楽しそうだという想像が膨らんだくらいか。


双子かぁ……二人ともアリス似の美形さんになるに違いない。


エクスさんのアホみたいな馬鹿力は受け継がなくていいけど、護身術くらいは教えたいものだ。


いかん、想像すればするほどアリスが恋しくなる。


よし、絶対にここでの話が終わったらアリスに会いに戻ろう。


時間?そんなものどうとでもなる。


アリスに会ってエネルギー補給しないと俺は死んでしまう。


新婚期間中なのも大きいけど、とりあえず早く帰れるように努力しないとね。

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